獣医科医療の最先端技術。今回は脊髄神経細胞の再生技術と手術後リハビリテーションについてお話しします。引き続き、中山獣医科病院の中山正成先生にお話を伺います。

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中山先生は2014年に日本獣医師会の獣医学術功労賞を受賞されました。現在までに育てられたお弟子さんの数が75名・そのうち8名が博士号学位保持者という脊髄脊椎治療の権威です。

中山先生に「今一番力を入れておられることは何ですか?」と伺いましたところ、「骨髄幹細胞移植による脊髄神経細胞の再生です」というお返事が返ってきました。先の「脊椎疾患の治療」でご説明しました手術後のケアとも深くかかわってくることです。今回も専門用語が多く出てきますが、獣医学医療はここまで進んでいることを実感していただくためにも、ぜひご覧ください。


骨髄幹細胞移植とは?

椎間板ヘルニアの手術が終わっても、獣医師の戦いはまだ続きます。中山獣医科病院では2003年から骨髄幹細胞を移植することにより、手術後の脊髄神経細胞の再生を促す治療を行っています。

幹細胞とは、生体内に存在する各種細胞の分化の元になる細胞で、再生医療に利用することができるとして注目されています。治療は大学との連携を密に取りながら進められました。骨髄幹細胞は神経細胞の再生を促し、高い確率で治療の効果を上げることが可能です。


どうやって治療するの?

移植に際しては、同じ犬から取った骨髄幹細胞を用います。この細胞は手術時に犬の大腿骨より採取。自己の細胞を用いることで免疫拒絶を防ぐことができます。この細胞を培養して増やし、手術部位に移植するのが治療の基本方針となります。

中山獣医科病院には細胞培養の施設が完備され、病院内部で細胞を増やすことができます。

細胞培養の設備

中山獣医科病院では、細胞培養の設備を備えています

神経に分化する可能性のある細胞を一週間で数百万倍に増やし、体内に戻す作業を行います。細胞の投与は1週間から2週間に1回、注射針で患部に注入します。これを4回線り返します。「椎間板ヘルニアの治療に効果がある」と申しましたが、交通事故や怪我による重度な脊髄損傷や骨折の癒合不全にも応用できるすぐれた治療法です。

後肢の痛覚消失をおこした椎間板ヘルニアで、慢性期において脳脊髄液内に細胞投与を行った結果、10例中6例で運動機能に改善がみられ、歩行可能となりました。

中山先生のお話では、骨髄幹細胞の投与は、年齢が高くなって関節が固くなった犬の治療にも有効だそうです。7歳以上の犬の80%が関節炎を持つとのことで、猫も実は関節炎が多いそうです。猫は人に弱みを見せない傾向にあるので、疾患が発見されたときはかなり症状が悪化していることが多いのです。「高いところに登らない」「寝ている時間が長くなった」などの傾向が見られたら関節炎を疑う必要があるということです。


手術後のリハビリテーション

もう一つ、中山獣医科病院で力を入れていることが、手術後のリハビリテーションです。脊椎手術の後、すぐにリハビリテーションを行うことが重要であるという観点から、1990年代より人のリハビリテーションを参考に、犬に対する方法の開発を行ってきました。術後の回復を促し、運動能力を高めるために効果的なメニューが考案されています。

リハビリ治療の内容をご紹介しますと、
ジェットバス

ジェットバスによる治療


1 現在までの病気の経過を確認
2 体重・体温測定
3 神経学的検査
4 臭のう腺絞り
5 ジェットバスでのリハビリ10から15分
6 電気刺激 5分
7 ドライング(被毛の乾燥)
8 耳掃除・足裏毛刈り・爪切り
ハイドロセラピー

水中で歩行することでリハビリ効果を上げるハイドロセラピー


9 レーザー5分
10 温熱治療10分

と至れり尽くせりの内容です。
(症例により、内容の一部に変更があります)

それぞれのプロセスについては十分な検討がなされています。たとえばレーザーにより、幹部の周りの筋肉や神経を刺激し、慢性痛をやわらげます。
温熱療法も痛みの軽減に効果的です。獣医師の監督のもとに行う治療の一環であるところが、トリミング等のサービスと大きく異なります。

また、こちらでは介護サービスも行っています。「日中預かりサービス」「宿泊ケアサービス」などのメニューがあります。高齢のペットに優しい、頼もしい動物病院です。

<取材協力>
中山獣医科病院
奈良県奈良市南袋町6-1
電話 0742-25-0007
http://www.nara-nakayamavet.com



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※ペットは、種類や体格(体重、サイズ、成長)などにより個体差があります。記事内容は全ての個体へ一様に当てはまるわけではありません。