脊椎疾患治療の名医に聞く
会長の中山正成先生です
中山先生は1974年のご開業以来、日本ではまだ脊椎疾患の治療が普及していなかった時期にいち早く、手術を主とした治療を始められました。
私事で恐縮ですが、筆者とは30年以上のご縁をいただいております。最初にお会いしたとき、先生はちょうど奈良県立医科大学でご研究中でした。長く中山獣医科病院の院長をつとめておられましたが、このたび院長職を退かれ、会長に就任されました。
奈良県奈良市にある病院には、専門治療を求めて飼い主さんたちが次々と訪れます。近鉄奈良駅からタクシーに乗っても、運転手さんが必ず病院の場所を知っているという超人気病院です。
現在、病院では獣医師・動物看護師合わせ19名のスタッフが働いています。
知っておきたい老犬に多い脊椎疾患
さて、犬の「脊椎疾患」とはどのようなものを指すのでしょうか? 読者の方の中には、レトリバーやダックスフントをお飼いの方も多いと思います。これらの犬種が高齢化したとき、一番心配な病気が椎間板ヘルニアによる歩行困難です。他にかかる確率の高い犬種は、ピーグル・コッカスパニエル・ウエルシュコーギーなどです。「うちの犬は若いし元気だ」「まだそれはどの老犬でない」と言っても、その可能性はゼロではありません。歩けなくなると排泄にも飼い主さんの手を借りなければならず、負担が多くなります。先に知っておいて損のない知識です。今回、治療についての解説を2回に分けて書かせていただきましたので、ぜひこの機会に脊椎 疾患についての知識を身につけてください。
椎間板ヘルニアとは?
では、椎間板ヘルニアとはどんな病気でしょうか? それは、脊椎椎間板の線維輪に亀裂が生じ、髄核(ずいかく)が繊維輪を押し上げる、もしくは破って飛び出してしまう状態のことを言います。膨れた、または飛び出した椎間板が神経などを圧迫することにより、激しい痛みや麻痺などの症状を引き起こします。早期に運動の失調や感覚の不全が現れ、引き続いて不全麻痺(麻痺はみられるが、運動機能の一部が残っている状態)が起こります。最終的には麻痺・排尿不全・深部痛覚の消失といった状態に陥ります。
機能の回復が困難な場合は車椅子での生活、または安楽死を余儀なくされます。
診断と治療はどうやってするの?
犬の椎間板ヘルニア診断は、いくつかの過程を経て行います。まず、一般身体検査・歩行検査・神経学的検査、次いで一般血液検査、そして単純レントゲン検査を行います。確定診断のためには、続いて脊髄造影レントゲン検査を行います。単純レントゲン検査とは、骨折などの部位を見つける通常のレントゲン撮影です。確定診断のためには、脊髄造影レントゲン検査を行います。脊髄造影により、86~98%の犬で、正確なヘルニア部位の診断ができると考えられています。
造影によって確認した部位をさらに詳しく診断するために、CT(コンピュータ断層撮影)を行います。
単純レントゲン検査は、類似の症状を示す疾患の区別に役立つことがあるのでやはり欠かせないプロセスです。
ナックリングで歩行困難であった犬
手術とリハビリでここまで回復しました
脊椎疾患の治療には長い目で予算を考えていただくのが良いかもしれません。
つぎの記事では、手術後のケアについてお話しさせていただきます。
<取材協力>
中山獣医科病院
奈良県奈良市南袋町6-1
電話 0742-25-0007
http://www.nara-nakayamavet.com