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三井物産の創業来初の赤字転落が意味するもの

三井物産の創業来初の赤字転落を発表しました。資源価格の下落で大幅な減損損失を計上することが赤字転落の理由です。これは今後、世界的に資源企業の破綻が続くことを示唆しているように思います。

戸松 信博

執筆者:戸松 信博

外国株・中国株ガイド

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米国では資源企業の破綻が相次いでいる

世界的な資源企業の破綻が予想される!?

世界的な資源企業の破綻が予想される!?

三井物産<8031>は16年3月23日に16年3月期の業績予想を下方修正しました。従来の1900億円の黒字予想を700億円の赤字に転落する見込みと発表したのです。資源価格の下落で大幅な減損損失を計上することが赤字転落の理由です。ちなみに三井物産が赤字となるのは創業来初めてのことです。

ところで、日本株には資源関連株が少ないのであまり話題になりませんが、米国では資源企業の破綻が相次いでいます。たとえば、米国石炭最大手のピーボディ・エナジー(米国ニューヨーク市場上場 証券コード:BTU)は、事業を継続するには財務が万全ではなく、破産手続きが必要になる可能性があることを明かしました。

既に石炭大手でライバルだったアルファ・ナチュラル・リソーシズとアーチ・コールは破産し、上場廃止となっています。ピーボディ社は現在社債の利払いを滞らせている模様です。しかし、その発表があるまで、ピーボディ社の株価は50日移動平均線を越えるほど大きく反発しており、完全復活したように見えていたのです。そこから、このような突然のニュースが発表され、株価は暴落しています。
破産の可能性を示唆した米国石炭最大手、ピーボディエナジーの株価推移

破産の可能性を示唆した米国石炭最大手、ピーボディエナジーの株価推移

今後世界の資源企業が破綻する懸念

ここに書いたのは一例ですが、2009年に行われた米国の量的緩和政策と中国の4兆元の大規模経済対策を初めとする世界各国で行われた景気刺激策の中で、世界中の資源企業は多大な借り入れを行いました。2015年の国際通貨基金(IMF)の報告書によると、2004年に約4兆ドルだった新興国企業全体の借入額は2014年には18兆ドルを遙かに上回ったとあります(多くは中国)。そして多くの企業は米ドルで多額の借り入れをしており、2014年後半から進んだドル高や2015年12月に行われた利上げで返済はますます厳しくなっているのが現在の状況だと思います。

このままいくと金融危機が発生する恐れもゼロではない世界的に株価急落!本当の要因は何?でも書きましたが、現在、世界の株式市場が長期的な下落トレンドに陥っていることの原因は、米国の大規模量的緩和政策や中国の4兆元の大規模経済対策を初めとする世界各国で行われた景気刺激策の副作用です。おそらく株価が本格的な上昇トレンドに戻るためには、大量の借り入れを行った企業がバタバタと倒産し、行くところまで行く必要があると思います。つまり、三井物産<8031>の創業来初の赤字転落が意味するものとは、量的緩和バブルで膨張した世界的な過剰生産体制の、痛みを伴う淘汰の始まりだと思うのです。もちろん淘汰が始まれば、世界的な株価急落は免れられないと思います。資源企業だけではなく、そこに資金を貸した銀行や投資家がダメージを負い、その損失を埋めるために様々な資産の売却に迫られる必要があると思われるためです。

現在は短期的な株価上昇局面にあり、5~6月ごろまで進む可能性があると思います。しかし、長期下落トレンドの中で、3ヶ月程度の短期的な反発はよくあることです。実は2008年もサブプライム問題が懸念される中で、1月と3月に米国FRBが緊急利下げを行い、「これで世界は救われた」ということで6月ごろまで数ヶ月の上昇トレンドが続きました(しかしその後、株価は暴落)。現在起こっている株価反発はこれとまったく同じことだと思います。そして、この株価の回復基調が5~6月ごろまで続けば、これで世界経済は大丈夫ということで米国が6月頃に2度目の利上げを行い、それがキッカケとなって、株価暴落が始まると予想します。

参考:日本株通信

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