オーストラリア紙幣をもとに、女性の社会進出を考えてみます
ふだん何気なく使っているお札ですが、他国のお札と比べてみると、新たな発見があるものです。今回は、オーストラリア紙幣をもとに、お札と女性の社会進出の関係について考えてみました。オーストラリアのお札は色とりどり
こちらがオーストラリアドルの紙幣です。カラフルでしょう。
お札はモノクロという私たちの固定観念が覆されますね。
お札の種類は、5豪ドル、10豪ドル、20豪ドル、50豪ドル、100豪ドルと5種類あり、色が紫、青、赤、黄、緑とすべて異なっています。カラフルなだけじゃありません。お札のサイズも5豪ドルが一番小さく、券面額が大きくなるほど紙幣サイズも大きくなります。わかりやすいですね。
そして独特なのが、その素材です。合成樹脂でできており、ポリマー紙幣といわれています。プラスチック紙幣といわれることもあります。偽札防止で導入された素材ですが、通常の紙ではないので、耐久性や防水性に優れていて破れにくく、長持ちするのが特徴です。ためしに水で濡らしてみましたが、見事に水をはじきました。海で遊んでも濡れないお札は、ゴールドコーストのサーファーたちにピッタリですね。
オーストラリア紙幣の人物に注目
オーストラリア紙幣の人物に注目してみましょう。<表面>
券種/人物/性別/職業
5ドル/エリザベス2世/女性/女王
10ドル/アンドリュー・バートン・バンジョー・パターソン/男性/詩人
20ドル/マリー・ライビー/女性/実業家
50ドル/デイビッド・ユナイポン/男性/発明家
100ドル/ネリー・メルバ/女性/オペラ歌手
<裏面>
5ドル/豪州国会議事堂
10ドル/マリー・ギルモア/女性/詩人
20ドル/ジョン・フリン/男性/フライングドクター創始者
50ドル/エディス・コーワン/女性/政治家
100ドル/ジョン・モナシュ/男性/軍人
いかがでしょうか?
男性と女性が紙幣に半数ずつ掲載されていることに気がつくでしょう。女性が表面に掲載されているお札の裏面には男性が、男性が表面に掲載されているお札の裏面には女性が掲載されています。それぞれの職業も実にさまざまですね。
一方で日本のお札はというと、1万円札の表面には福沢諭吉(慶応大学創始者)、5000円札の表面は樋口一葉(小説家・歌人)、1000円札の表面には野口英世(細菌学者)が載っています。樋口一葉は日本のお札に初めて掲載された女性です。その後、2000年に発行された2000円札の裏面には、源氏物語絵巻と一緒にその作家である紫式部が掲載されています。
紫式部が加わったことで、2000年からは日本のお札でも男性と女性の割合は同数になりましたが、残念ながら2000円札はいまほとんど流通していません。また、全体的に見て作家や文化人が日本の好みのようですね。
日本とオーストラリアの男女平等指数
ここで話はガラリと変わり、世界経済フォーラムから発表されている男女平等指数(ジェンダーギャップ指数)について注目してみました。これは、給与等経済活動、教育、健康と生存、政治への関与の4つの分野で、男女がどの程度平等に扱われているかを数値化して、国際比較した指標です。調査対象となった142か国のなかで日本は104位(2014年)。政治への女性の関与が著しく低く、また、給与等経済活動の分野で男女格差が縮まらない点で遅れています。一方でオーストラリアは24位。ベスト10に多数入っている北欧諸国と比較すると全体的には劣りますが、給与等経済活動の数値などは世界的に見てもトップクラスになっています。
そういえば、オーストラリアのカンタス航空に搭乗したところ、比較的年齢層の高いCAさん達が男女の別なく笑顔で働いていました。「CA(客室乗務員)さん=若い美女」を売りにしている航空会社も世界には数あるなかで、オーストラリアは航空の分野においても成熟した女性が長く活躍しやすい国なのでしょう。
ビジネスや政治の世界で活躍する女性の姿を、毎日目にする紙幣に載せることは、国民にとって「私にもできる」と思わせる大きな効果があるのかもしれませんね。
日本にもNHKの朝ドラ「あさが来た」のモデルとなった実業家の広岡浅子さん、国連で活躍した緒方貞子さんのように、大きなフィールドで世の中に多大な影響力を与えた女性たちがいます。次回日本のお札のデザインを見直すときには、政治や経済の分野で活躍した女性達をぜひとも選んでほしいものです。