メンヘラを引き寄せる、メンヘラホイホイ男子たち
自傷行為、激しい束縛など「メンヘラ」と呼ばれる女性と恋愛に発展しやすく、結果、心の闇をぶつけられやすい男性たちがいる。
そんな言葉で始まる、年下の男友だちの愚痴だか自慢だか相談だかよくわからない話……。これがよく聞いてみると、相手はだいたいアブナイ女子。彼女があなたを選んだ理由はよくわかる、と言いそうになって口をつぐむことが多い。
こういう男性に限って、次につきあうのもまた「あらら~」と思うタイプが多い。メンヘラ系女子と“うっかり”つきあってしまう、「メンヘラホイホイ男子」の特徴は、どんなところにあるのだろうか。
無理な要求にも、「振り回されるのはイヤじゃない」
学生時代から数えて、つきあった女性は3人。すべてが「今思えばメンヘラ系」と言う男性、アキラさん(仮名=以下同・33歳)に、話を聞いてみた。「最初の彼女は、大学1年のとき。同じ学部のかわいい子でした。同性にはあまり好かれてなかったみたいだけど。素直で明るくていいなと思っていたんだけど、つきあって1ヶ月後には、夜中に電話がかかってきて『寂しい。今すぐ来て』と言うようになった。彼女は実家からたんまり仕送りをもらっていたけど、僕は必死でバイトしないと食べていけない境遇。『明日も朝から講義だし、夜はバイトだから……』と言っても、『来てくれなかったら死んじゃう!』とか言うわけですよ。そう言われたら行くしかないでしょ。振り回されるのは別にイヤじゃないんですよ。だけどそれがあまりにも続くと、こっちもやってられないという気持ちになる」
「私のことが好きなら行動で示して」という愛情を試す電話が頻繁にかかってくる。
「だけど僕が忙しいときに限って、無理なことを要求してくるんですよね。愛情を試してるんだろうなと思ったから、『世界一好きだけど、それは無理』とかわしたりしてた。だけど、ある日とうとう、本当に手首を切って自殺を図った。とはいえ、医師によれば死ぬような傷ではなかったみたいですが……」
アキラさんは一気に、彼女に対する気持ちが冷めていった。ただ、冷めていてもそうは言えない。ここがメンヘラホイホイ男子の特徴だ。うまく別れることができず、はっきり「いいかげんにしろ」とも言えない。だから女性は、どんどん相手を試す方向に走っていく。
ついに彼女は、リストカットばかりするようになった。大学3年のとき、ついに親が実家に連れ帰ったという。
「大学では、僕が彼女をそういう方向に追い込んだという噂が流れました。女友だちは『だからあの子はやめろって言ったじゃない』と、みんな同情してくれましたけど。同性に好かれる女性じゃないといけないなと学びました」
学んだにもかかわらず、次の彼女は怒ると部屋の中のものを何でも壊してしまうデストロイヤー系女子。そしてつい最近、ようやく別れた彼女は、ひたすらすがってくる粘着系女子だった。
面倒な彼女とつきあうことに、「生きがい」を見いだしている?
アキラさんは、あまり情熱の発露を見せないタイプだ。いつも冷静で、相手と話すときもつい説得調になるという。「説教はしませんけど、彼女が感情的になっていると、理屈で説得したくなってしまう。それが相手のネガティブな感情に火をつけるんでしょうか」
そういう女性を理屈で説得しようとしても無理なのだ。試し系女子は、そういう男をもっと試したくなる。デストロイヤー系女子は、彼の冷静な態度にますます怒りが抑えきれず、ばんばんモノを壊す。そして、粘着系女子は、自分がまるごと愛されている気がせず、ますます粘着してしまう、というわけなのだろう。
「わからないんですよ、女性にどうやって対処したらいいのか。だからどうしても相手に合わせようとしてしまう。合わせてわかったふりをするから、相手の気持ちをヘンに逆なでするというか、悪いところを助長してしまうというか……」
共依存から抜け出さなければ、「メンヘラホイホイ」からも脱することはできないのかもしれない。
「手応えを感じているところはあるかもしれません」
手応え?
「自分でなければ、こういう面倒な彼女とはつきあえない。そこに自分の生きがいを見いだしてしまうというか……。こういう彼女とつきあっている自分は、けっこう度量が大きいんじゃないかとも思えるし」
結局、彼女のためではなくて、自分に自信を持つためにつきあってきたのだろうか。
「いや、そういうことではなく、結果論ですけど」
なんだか、めんどうな彼女とつきあうことで自分に酔っているようにも思えるのだが……。
優しさがあだとなり、彼女の過干渉を助長させる
付き合ったら痛い目をみる。でも、そんな彼女と付き合っている自分がどこか誇らしい。だから、抜け出せない。
やはりメンヘラ女子とばかりつきあっているヒロトさん(35歳)は、過干渉な母親に育てられたためか、「マザコンだと思われがちだけど、実は母親的な女性が苦手」なのだという。それなのに、つきあう女性は過干渉タイプが多い。周りが「今回も干渉されるよ」と言っても、彼は、「今度の彼女は違う」と言い張ってしまうのだ。結果は、いつも周りが正しい。
「女性を見る目がないんでしょうね。親しくなると、いきなり土足で踏み込んでくるような女性とばかりつきあってしまう。それでこれはヤバイと逃げようとしても逃げられない。ずぶずぶとドロ沼に引き込まれてしまうんです」
別れた女性がストーカー化したこともある。
「ノーと言えないからいけないんだとわかっているけど、僕がノーと言ったら彼女がかわいそうだと思ってしまう。それでついつい彼女に支配され、最後は僕がメンヘラ状態になってしまう」
ウツになった彼女に、「ウツを移されたこともある」と彼は言う。相手に同化しやすいのかもしれない。
ヒロトさんの場合、際限ない底なしの優しさにつけいられてしまうようだ。男を支配したい女は、支配しやすい男を見分けるのがうまいのだろう。
話を聞いてるだけで、こちらも鬱々としてきてしまうのだが、それでも彼らは言葉の印象ほど暗くなってはいない。
彼も、やはり心のどこかに、「僕じゃないと、ああいう女とはつきあえない」という妙な「自信」があるように思う。いや、男は、そういった「なにがしかの自信」を持たないと生きていけないものなのかもしれない。
【関連記事】