世界的にはリスクオン、日本株は何故上がらない?
世界的なリスクオンにもかかわらず、日本株は何故上がらない!?その謎を解く鍵を握るのはドルインデックスの動きにありそうです
これに加えて新興国の株価も上昇に転じています。米国や新興国の株価だけを見ると、世界的にはいわゆるリスクオンの状態です。これまで、世界的にリスクオンの状態になった時には円安に振れやすくなり、日本株は上昇してきました。ところが、今回は世界的にリスクオンであるのにも関わらず、110円台まで円高が進み、日本株は下落。日経平均は再び1万7000円を割り込んでしまっています。
謎を解く鍵はドルインデックスにあり
これは今までの動きとは真逆な動きです。一体どういう事のなのでしょうか? 日本といえば、つい最近もマイナス金利導入を発表し、金融緩和をしたにもかかわらず、です。この謎を解く鍵はドルインデックスにあると言えそうです。ドルインデックスとは米国主要貿易相手国通貨を加重平均したもので、ユーロ57.6%、円13.6%、英ポンド11.9%、カナダドル9.1%、スウェーデンクローネ4.2%、スイスフラン3.6%からなる指標で、ドルがこれらの通貨バスケットに対して上がっている下がっているかを表す指標です(つまりドルの強弱を表す)。
前述のように、これまで米国FRB参加メンバーは2016年に年4回利上げを予想していましたので、ドル高が進んできました(お金は水と逆で、少しでも有利な運用をしたいため、金利が低いほうから高い方へと流れる傾向がある)。しかし、年2回に予想を引き下げたことで、ドルインデックスが急落し(上の図で赤丸部分)、結果として、ドルペッグしていない、ユーロや円、ポンドなどの通貨はドルに対して通貨高(日本の場合円高)が進んでいます。これは欧州や日本の株にとっては大きなマイナスであり、日本や欧州の株価は優れない様子です。
一方、ドルペッグしている新興国や資源国にとって、ドルインデックスの急落は大きなプラスです。ドルペッグしている新興国にとっては通貨の相対的な下落につながり、輸出に有利に働きます。また、新興国は全体としてドルの借り入れが多いためドルの下落は自国通貨ベースでの負債削減に繋がる傾向があります。更に、ドルと商品価格は反相関関係にあり、ドルが下がると商品価格が上昇しやすくなり、これは資源国にとってプラスです。
日本株は下がったところはチャンスとも
このような理由から米国株や資源、新興国は堅調で世界的にはリスクオンとなっているのに、円高となり、日本株は軟調な推移となっているわけです。もっとも、果たしてこのままドルインデックスの調整が続き、米国株の上昇と日本株の下落が続くかというとそうとは言い切れないと思います。たしかに4~6月ごろまではこの状況が続く可能性があります。2008年も1月と3月に米国の緊急利下げがあり、3~6月にかけて世界的に株価が上昇したことがあります(この時は日本株や欧州株も回復しましたが)。しかし、円高やユーロ高が続けば、日本や欧州は追加金融緩和が視野に入ってきますし、FRBはさらに利上げペースを緩やかにすると言っても限度があります。そしてドルインデックスは下がったとは言っても、2014年の前半から比べればまだまだ高水準です。ドルの負債を多額に抱える新興国や新興国企業にとってはドル高はまだまだ続いている状態であり、頭の痛い問題で、いずれどこかで無理が効かなくなってくると思います。
【参考記事】
世界的に株価急落!本当の要因は何?
もちろん、その間に金融引き締めの方向に転じられるまで日本や欧州、あるいは中国の景気が良くなれば、ドルへの資金集中が緩和されて、世界的に業績相場に転じていけると思うのですが、現時点では、そうなる可能性は低いように思えます。
ただ、日本株について考えれば、このあと追加金融緩和が期待されるようになりますので、調整したところは短期的な買いチャンスになると考えることもできると思います。もちろん、その後、世界的に株価が下がる局面があれば日本株も下がることになると思いますが。
参考:日本株通信
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