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固定資産税はブラックボックス

分かりにくい固定資産税の仕組みは、まるでブラックボックスのようです。納税者本人が評価額などを確認できる「固定資産税の縦覧制度」もありますが、間違いがあっても容易に気づくことはできません。(2017年改訂版、初出:2016年2月)

執筆者:平野 雅之


固定資産税の誤課税問題については ≪固定資産税の誤課税はなくならない!?≫ や ≪固定資産税の課税ミスに不動産業者は気付かない?≫ でも取り上げましたが、毎年のように全国のどこかの自治体で固定資産税がらみのミスが明らかになっています。

固定資産税の誤課税は長期間にわたるものが多く、旭川市では36年、横浜市では32年もの間、他人に請求をしたり過大な請求をしたりした事例がありました。それとは逆の「過小請求」が長年にわたり続いていたという事例は報道されていないようですが……。

膨大な課税件数のなかでの割合にすれば、誤課税はごくわずかなケースかもしれませんが、数十年もの間、誰も気がつかないことに大きな問題が潜んでいます。まさに「ブラックボックス」だといえるでしょう。

固定資産税や都市計画税の税率構造は単純なものの、そのもとになる評価額の決定システムは複雑で、軽減措置や私道の補正制度なども分かりづらいものになっています。自治体によって異なる部分もあるため、第三者がチェックすることも容易ではありません。

固定資産税の評価額は、毎年4月頃の一定期間に納税者本人などが確認をして、それに不服があれば審査の申出ができる仕組みになっており、これを「固定資産税の縦覧制度」といいます。

しかし、帳簿をみてそれが正しい価格かどうかをすぐに判断できる納税者は、全国を探してもほとんど存在しないのではないでしょうか。

縦覧では、他の土地や家屋と比較ができるという建前になっているものの、一つひとつ単価に直してみてそれが大きく異なるのならともかく、ざっと評価額に目を通しただけでは、たとえ間違いがあってもなかなか気づくようなものではないのです。

さらに、実際の税額を算出する段階で役所にミスがあっても、よほど制度に詳しい納税者でないかぎり、それを判別することは困難です。もし、現在進行形で固定資産税の誤課税があったとしても、闇から闇へ葬られてしまうものが多いのかもしれません。

住宅を購入して固定資産税などの納税義務者になったときは、毎年の税額にもしっかりと意識を向けたいものです。


>> 平野雅之の不動産ミニコラム INDEX

(この記事は2007年12月公開の「不動産百考 vol.18」をもとに再構成したものです)


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※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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