初の対外試合で、スタンドを“オコエ劇場”に
やはり「持っている」男は違う。
二回、先頭で打席に立つとストレートで四球を選んだ。次打者・下妻への2球目に思い切ってスタートし、プロ初盗塁に成功。まずは最大の武器であるスピードを披露した。
四回一死一塁ではフォークを左前へプロ初安打を放った。六回一死一、三塁の場面ではスライダーを中犠飛してプロ初打点をマーク。スタンドを“オコエ劇場”にしてしまった。
「今まで(体が前に)突っ込んでいたが、突っ込まずに(重心を)残せた。やってきた成果が出ました」
課題とされた打撃。キャンプ序盤はプロの速さに対応できず、詰まった打球が目立った。直球に振り遅れたくないという気持ちから自然と前に突っ込むスイングになり、変化球にもタイミングを狂わされていた。そこで重心を後ろに残すことを意識した。いわゆるステイバック。変化球に対応するためには絶対的にとらなければいけない心構え(意識)であり、外国人プレーヤーが日本で成功するための必須のスタイルだ。オコエはその点をうまく取り入れた。
プロ初安打がフォーク、プロ初打点をマークした中犠飛がスライダーとともに変化球だったことがその証拠だった。
グッと近づいてきた「開幕一軍」
オコエの活躍に各チームのスコアラーたちも警戒する。西武・福島スコアラーは「能力はある。プロのスピードに慣れることが大事。ヒットが出たし犠飛も出た。何か持っているのかな」と言い、ヤクルトの角編成担当は「彼には、教えてできるものではない生まれ持った勘がある。高校生と思えない体。試合経験を積めば楽しみ」と評価した。また、阪神の飯田スコアラーは「対応力があり、高卒新人と思えない。近い将来、レギュラーを獲る」と言い切った。当初よりも評判が上がっているのは間違いない。14日のバレンタインデーには、女性人気の高い哲朗(約90個)、岡島(約80個)、嶋(約50個)に次ぐ40個のチョコレートをゲットしたオコエ。人気先行の感があったが、そこに勝負強さが加われば、見えてくるものは当然「開幕一軍」だ。
7日に行われた紅白戦に白組の「2番・中堅」で出場し、実戦デビュー。第1打席から3打席凡退と“プロの洗礼”を受けたが、七回無死一、二塁で高堀から左中間へ2点三塁打を放った。このとき、梨田監督は「(強運を)持っている」と称賛したが、この日は「3点目が入れば試合を支配できるところで打ってくれた」と安打よりも犠飛を褒め、成長を認めた。
「開幕一軍」をグッと近づけたオコエ。「基礎をもっと積み上げないと。先輩たちの良いところを盗み、吸収したい」とそのために必要な貪欲さも出てきた。