「奥の細道シリーズ」の構成
「奥の細道シリーズ」は昭和62(1987)年から平成元(1989)年にかけて、計40種(発行枚数各1,650万枚)が発行されました。ちょうど「奥の細道」の旅立ちの年から300年でシリーズを完結するようになっています。芭蕉の句をモチーフにした切手は、当時を代表する書家や画家によって手がけられ、名高い文学に華を添える内容となっています。また「書」を主題とする切手は日本初の試みであり、平成16(2004)年から発行されている干支文字切手の先駆けともいえるでしょう。芭蕉からの手紙?
『奥の細道』というと近寄りがたい感じもしていましたが、実際に「奥の細道切手原画展」を見てみると、もっと気軽に芭蕉からの手紙くらいに考えるとよいのかなと思いました。『奥の細道』自体が歌人・西行法師の五百回忌を記念したものでもありますし、「夏草や兵共が夢の跡」という有名な句は、杜甫の「国破れて山河在り」(「春望」)が踏まえられています。ひょっとしたら、彼が歌枕の地や旧所名跡で感じたことを綴って、過去の詩人や歌人に宛てた読まれざる手紙なのではないかという思いに駆られました。切手デザイナーの役割
もう1つ「奥の細道切手原画展」を見て分かるのが、切手デザイナーの役割です。一流の書家や画家たちの作品を組み合わせて、1つの特殊切手として成立させるのが切手デザイナーの役回りです。音楽でいえば、指揮者みたいな立場でしょうか。今回の展示では切手制作の過程も示すことで、切手デザイナーの仕事をも際立たせる配慮がされていて、最近切手デザイナーが注目を集めているだけに、時宜を得た展示となっています。3月5日と6日には現在活躍されている切手デザイナーの方によるトークイベントもあります。次のページでは、いよいよ「奥の細道シリーズ」の収集のポイントについてです。