そもそもマイナス金利と何か?
1月29日に日銀はマイナス金利の導入を発表しました。日銀は物価や投資の促進等を表向きの理由にしていますが、本音は円安誘導にあると思います。
ちなみに、もともと2008年10月までは全ての日銀の当座預金はゼロ金利でした。しかし、金融危機後に金融市場の安定を確保する観点から、補完当座預金制度が2008年10月に導入されたことにより、結果として、所要準備額を超える当座預金(=超過準備)には0.1%の金利が支払われるようになりました。もともとは臨時の措置でしたが、延長されて現在でもこれが機能している形になります。
ところで、どうして3段階の階層構造になっているかというと、日銀の当座預金が余りにも巨額で(およそ250兆円)、全てにマイナス金利を適用すると金融機関の業績が悪化する懸念があるからです。なお、マイナス金利導入で市場全体が急騰した1月29日(金)の日本株ですが、銀行セクターはマイナスに沈んでいます。
マイナス金利導入の本音は円安誘導か
ところで、マイナス金利が導入された目的は何でしょうか? 表向きには市中銀行の貸出を促進する目的と言えます。これまでは日銀の当座預金にお金を入れるだけで少ないながらも0.1%の金利を確保できたわけですが、今後の増加分はマイナス金利になってしまいます。つまり、金利を支払う位なら他に貸しだそう、と市中銀行が行動することを期待している訳です。貸出が促進されれば、景気が良くなり、日銀が目標としている2%の物価目標達成につながってきます。しかし、これは表面上の理由で、日銀の本音は円安誘導にあると思います。日本の金利を低く誘導すればするほど、米ドルや他の通貨との金利差は広がり円安に誘導されます。円安こそアベノミクスの神髄であり、円安頼みの企業業績アップ、株価アップ、賃金アップという構図です。それ以外の戦略(新旧三本の矢)は功を奏していません。すでに年額70~80兆円のバズーカを2度打ち放ってきましたが、株価は発射前の水準に下がってきました。これ以上下がると年金資産へのダメージや、政権求心力にも影響してきます。
円安が止まれば訪日客の伸びにも響きます。企業業績は円安効果で増益を続けてきましたが、14年末から120円で止まり、ここから先は対前年比での増益効果がでなくなります。そして多くの企業の想定為替レートは118円程度ですので、116円台にまで下がったことは容認できず、結局日銀は、つい先日まで自ら否定していたマイナス金利策の導入に踏み切ったのだと考えられます。
なお、今回の発表では状況に応じてマイナス金利の水準が更に引き下げられたり、範囲が拡大される可能性があることが示唆されています。これは債権の買い入れ措置に限界があるとの見解がある中で、(もちろんマイナス金利にも限界はありますが)日銀は新たな武器を手に入れたことになり、日本の景気や物価、株価が立ち直るまでの猶予期間をさらに得たことにつながります。
参考:日本株通信
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