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五輪サッカーの「オーバーエイジ枠」とは?

男子サッカーがリオ五輪出場を決めた。同時に、メディア上に「OA」という文字が見られるようになった。「オーバーエイジ」という意味だが、サッカーに詳しくない人にはちょっと分かりにくいだろう。これから頻繁に話題にあがるであろう「OA」について、分かりやすくご説明したい。

戸塚 啓

執筆者:戸塚 啓

日本代表・Jリーグガイド

五輪の本大会にはオーバーエイジが出場できる

男子サッカーの五輪競技が23歳以下で争われるのは、前回のコラムで触れたとおりである。30日まで行われるアジア最終予選も23歳以下のチームで争われたが、本大会は違う。

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五輪の本大会では24歳以上の選手が、1チーム3人まで出場できるのだ。これがOA=オーバーエイジである。クラブチームのサッカーに当てはめると、外国人枠のようなものと考えればいい。「OA枠」や「オーバーエイジ枠」と表記されることもある。

アジア最終予選は1チームの登録人数が23人だったが、五輪は1チーム18人である。5人も減るなかで上位進出を目ざすには、OAの活用が不可欠と言ってもいい。

すでに経験や実績を持っているOAを使わずに、23歳以下の選手たちにより多くの経験を積ませることも、日本サッカーの利益にはかなう。ただ、大会を勝ち進むことでより多くの試合を消化することができ、なおかつ強豪国と対戦できる。OAによる戦力アップは、その意味でも必要と考えられる。


年代によって異なるオーバーエイジ事情

過去のチームはどうだったのだろう。

96年大会は、23歳以下の選手に世界の舞台を経験させるため、OAを使わなかった。それでも、前園真聖、中田英寿、川口能活(40歳、SC相模原)、城彰二ら、のちに日本代表で活躍する選手が揃い、サッカー王国ブラジルを撃破する大金星をあげている。

2000年大会はOAを採用した。当時の監督だったフィリップ・トルシエが、U-23日本代表と日本代表の監督を兼任していたため、OAを使いやすかったという事情があった。同時に、中田英寿、中村俊輔(37歳、、横浜F・マリノス)、稲本潤一(36歳、コンサドーレ札幌)、高原直泰らが主軸を担い、表彰台を狙える戦力が整っていたということもある。オーバーエイジを加えて、表彰台を狙いにいったのだ。

OAに指名されたのは、ゴールキーパー(GK)の楢崎正剛(39歳、名古屋グランパス)、センターバック(CB)の森岡隆三、ミッドフィルダーの三浦淳宏の3人だった。GKとCBはセンターラインと呼ばれ、チームの背骨となる重要なポジションだ。また、複数のポジションをこなせる三浦は、18人という限られた人数のなかで、戦術的な幅を持たらす人選だった。

4年後のアテネ五輪には、GK曽ヶ端準(36歳、鹿島アントラーズ)とMF小野伸二(36歳、コンサドーレ札幌)がOAにリストアップされた。やはりセンターラインの強化を目的としたものである。小野は23歳以下で出場資格のあった2000年の大会でメンバーから漏れたため、当時の山本昌邦監督が「五輪に賭ける思い」をぶつけてほしいとの意図もあった。

反町康治(現松本山雅FC監督)が率いた08年の北京五輪は、OAを使わなかった。本田圭佑(29歳、ACミラン/イタリア)、香川真司(26歳、ドルトムント/ドイツ)、岡崎慎司(29歳、レスター/イングランド)、長友佑都(29歳、インテル・ミラノ/イタリア)、内田篤人(27歳、シャルケ/ドイツ)ら、のちに海外へはばたく選手たちが揃っていたこともあり、反町監督はアジア予選を戦った23歳以下のチームで臨んだ。

32年ぶりにベスト4まで勝ち上がった12年のロンドン五輪は、吉田麻也(27歳、サウサンプトン/イングランド)と徳永悠平(32歳、FC東京)がOAに選ばれた。吉田は日本代表でレギュラーをつかんでいるセンターバックで、当時はオランダ1部リーグのVVVフェンロに在籍していた。徳永は守備のポジションならどこでもこなせる万能型で、04年のアテネ五輪のメンバーでもある。吉田は国際経験とリーダーシップを、徳永はチームの戦術的柔軟性を高めながら五輪の経験を還元し、ベスト4入りを後押ししたのだった。


リオ五輪で考える、オーバーエイジの適性とは?

手倉森誠監督が率いる今回は、誰がOAに加わるのか。そもそも、指揮官はOAを使うのか。

もし使うことになったとしても、たとえば日本代表最多出場を誇る遠藤保仁(36歳、ガンバ大阪)や本田、長友らが選ばれるとは考えにくい。リオ五輪世代にとって、彼らの経歴は少しばかり眩しいからだ。遠藤らが「気軽に話しかけていいよ」と歩み寄ってくれても、23歳以下の選手たちは戸惑ってしまうだろう。

OAを加えた合宿や練習試合も限られているため、コンビネーションをどこまで成熟させられるかという不安も付きまとう。センターラインをガラリと変えることは、時間的な制約を考慮すると難しい。かつての三浦淳宏や徳永悠平のようなタイプがベターだろう。あとは、できるだけ年齢の近い選手がいい。兄貴分として溶け込みやすいからだ。

日本にとって朗報なのは、リオ五輪にドイツが出場することかもしれない、ということ。ドイツのブンデスリーガでは日本人が数多くプレーしているが、2016-17シーズンは五輪に出場するため開幕が通常よりも遅い。カレンダーの上だけなら、五輪に出場したあとでもリーグ戦に間に合う。

U-23日本代表の手倉森誠監督は、日本代表のコーチも兼任している。このため、ブンデスリーガのクラブに在籍する香川、内田、清武弘嗣(26歳、ハノーファー)、武藤嘉紀(23歳、マインツ)らとも、コミュニケーションをはかることができる。かりに招集されたとしても、指揮官との意思疎通はスムーズに進む。同じことは本田、長友、岡崎らにも言えるが。

いずれにせよ、海外クラブでプレーしている選手については、日本サッカー協会とクラブの交渉次第だ。手倉森監督が「OAを使いたい」と言っても、クラブ側の了承が得られなけれはかなわない。また、Jリーグは五輪に伴う中断がないため、国内からOAを選ぶ場合もクラブとの話し合いが必要となる。

ともあれ、8月上旬開幕のリオ五輪へ向けて、「誰がメンバーに選ばれるのか」という興味が生まれたのは確かだ。23歳以下の選手たちの今後の成長はもちろん、OAに誰がふさわしいのかも注目されていくだろう。
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