五輪サッカーは”23歳以下のワールドカップ”

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男子サッカーの五輪予選は、23歳以下(アンダー23)の選手に出場資格がある。今回は1993年1月1日生まれ以降の選手たちだ。

なぜ五輪に年齢制限が設けられたのかと言えば、世界のサッカーを統括する国際サッカー連盟(FIFA)がワールドカップとの差別化を求めたからである。

かつてはアマチュア選手しか出場できなかった五輪サッカーだが、20世紀後半から時代の流れとともにプロ選手の出場が認められるようになった。しかし、各国のスター選手がのきなみ出場したら、ワールドカップとの線引きが曖昧になってしまう。ワールドカップのステイタスを保つために、五輪は「23歳以下のワールドカップ」という位置づけになったのだ。本田圭佑(29歳・ACミラン/イタリア)や香川真司(26歳・ドルトムント/ドイツ)らの日本代表選手が、最終予選に出場していないのはこのためである。

日本の若手選手たちを束ねるのは、手倉森誠(てぐらもり まこと)監督だ。2012年にJ1リーグのベガルタ仙台で優勝争いを演じ、14年1月からこのチームを率いている。元日本代表の井原正巳や中山雅史と同級生の48歳である。


アジアの出場枠は「3」

中東のカタールで開催されているアジア最終予選は、1月12日に開幕し、23日にベスト4が出揃った。26日に行われる準決勝のカードは、日本対イラク、韓国対カタールとなっている。

アジアからリオ五輪に出場できるのは、このうち3か国だ。準決勝で勝利した2チームと、3位決定戦を制したチームが、世界の舞台に立てるのである。ちなみに、3位決定戦は29日、決勝戦は30日に行われる。


過去の成績では劣勢の日本だが…

各国の実力を過去の成績から比較すると、率直に言って日本は見劣りする。

準決勝で激突するイラクは、14年1月に開催された22歳以下のアジア選手権で優勝している。日本はこの大会の準々決勝でイラクと対戦し、0対1で敗れた。

14年1月時点で22歳以下の出場選手に出場資格があったため、イラクはそのとおりのメンバーでこの大会に臨んだ。一方の日本は、現在行われている最終予選を見据えて、当時21歳以下の選手でチームを構成した。決勝点を決められた選手も現在は24歳で、今回の最終予選には出場していない。そうは言っても、敗戦の記憶は拭いがたいものがある。

実は同世代の戦いでも、イラクには苦杯を喫した。

12年に行なわれた20歳以下(アンダー20)ワールドカップのアジア予選準々決勝で、1対2の敗戦を喫している。キャプテンを務める遠藤航(22歳・浦和レッズ)、ゴールキーパーの櫛引政敏(22歳・鹿島アントラーズ)、ストライカーの久保裕也(22歳・ヤングボーイズ/スイス)ら、今大会に登録されている10選手は、20歳以下のカテゴリーでイラクに打ち負かされたメンバーだ。

さらに、14年秋に開催されたアジア大会でも、グループリーグでイラクに1対3と敗れている。日本のリオ五輪世代は、イラクに3連敗を喫しているのだ。

26日の準決勝の見通しはどうか。

勝算は十分にある。


日本を後押しする二つの要因

ひとつ目は、「負の歴史を覆した」ことだ。

アンダー20ワールドカップのアジア予選、14年1月の22歳以下アジア選手権、同年秋のアジア大会と、この世代の選手たちはすべて準々決勝で敗れてきた。アジアのベスト8は、彼らにとって分厚い壁だった。

しかし、今回は準々決勝を勝ち抜いた。イランとの対戦は0対0のまま延長戦へもつれたが、最終的には3対0で勝利した。ベスト4入りはリオ五輪出場を引き寄せることはもちろん、選手たちの精神的な壁を取り払うことにもつながった。「準々決勝に勝利すれば、眼に見えないパワーが生まれる」と手倉森監督は話していたが、まさにそのとおりの展開となっている。

ふたつ目は「コンディションの違い」である。

日本は22日に準々決勝を戦ったが、イラクは翌23日に試合を行なった。26日の準決勝へ向けた休養は、日本のほうが1日長いのである。

たかが1日ではない。ここまで中2日で4試合を戦ってきた選手たちは、誰もが疲労を抱えている。日本にとっては大きなアドバンテージだ。

さらに付け加えれば、日本は選手を入れ替えながら戦ってきた。4試合連続で先発した選手はひとりもいない。選手の疲労を分散する手倉森監督の采配も、3度目の正直──イラクからの初勝利を予感させる。

我々としては考えたくないことだが、準決勝に敗れて3位決定戦に回った場合はどうか。

韓国は実績、実力ともに大会屈指だ。14年のアジア大会で金メダルを獲得しており、チームのレベルはきわめて高い。20歳以下のワールドカップにも出場してきており、国際経験も備えている。手強い。かなり手強い。

カタールには勢いがある。観客席に空席が目立つ今大会にあって──日本対イランの準々決勝は、公式入場者が1703人だった──彼らのゲームだけはスタジアムが熱狂に包まれる。開催国のアドバンテージを持つカタールは、今大会で実力以上の力を発揮している。五輪に出場すれば1992年以来の快挙となり、選手には高額のボーナスが支給されるとも言われている。こちらも厄介な相手となるだろう。

手倉森監督は強気だ。イラクとの対戦を歓迎し、韓国との決勝戦を熱望する。

「自分自身も22歳以下アジア選手権とアジア大会で、イラクには2度負けている。悔しい思いをさせられたチームに勝ってこそ、リベンジを果たしたと言える。準決勝でイラクを下し、決勝ではアジア大会で敗れた監督を破って優勝したい。ここまで勝ち上がってきたことでつかんだ自信を、選手たちは示してくれると思います」

96年のアトランタ五輪から12年のロンドン五輪まで、日本は5大会連続で出場している。日本時間の26日22時30分からキックオフされる準決勝は、日本サッカーの歴史に残る一戦となるだろう。


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