注意すべきは目先の物件にとらわれすぎないこと
よくいわれることですが、どのような住宅取得のスタイルであっても、例えば複数の分譲住宅を見たり、あるいは何社かのハウスメーカーとの商談を経て、それから決断することが、より良い住まい選びの絶対条件です。気に入った物件が見つかったら、その住宅を建てた事業者の建築中の建物を見てみたい。そこで耐震性の確保などでどのような工夫をしているかが何となくわかるはず。できれば、作業をしている人に聞いてみるのもいい。高額な買い物。それくらいの手間はかけたい
人は目の前に物件があると、どうしてもそれが魅力的に見えてしまって、「これでいいや」と短絡的な決断をしてしまいがちになります。これが他のモノだったらいいのです。しかし、住宅は少なくとも20年、30年と長く使うものですし、家族の安心・安全を守るシェルターでもあります。
ごく普通の分譲住宅とはいえ、2000万円程度の高額な買い物です。もっと、様々な検討をしても良かったのではないでしょうか。彼は私と同じ40歳代半ばで、結婚はしていますが子どもはいません。子作りには励んでいるようですが、もしかしたらこのまま夫婦二人で生活するかもしれません。
要するに、これからの生活がどうなるのか、未確定な部分もあるわけで、そうだったら例えば賃貸住宅に住み続ける、あるいはコストを抑えられる平屋建ての住宅を建築するという選択肢だってあったわけです。
また、もう一つ気になっていることとして、奥さんとしっかり良く話し合ったのだろうか、ということがあります。話をしていてご両親や兄弟の意見は聞いていたようですが、奥さんの話は全く出てきませんでした。
これもよくいわれることですが、女性の方が住宅で長い時間を過ごします。もし奥さんが気に入っていなかったら、後々大変だろうなと思わざるを得ません。ちゃんと奥さんの意見も聞いての購入だったら良いのですが…。
このように心配するのには理由があって、友人は典型的なB型人間で実にマイペースな男。また、九州男児ということもあり少し強引なところがあり、突発的に物事を判断するところがあるのです。B型の人ごめんなさい。
「なぜ住宅を取得するのか」を改めて考えよう!
ただ、友人のケースから、「目先の物件にとらわれがちになること」「発言力のある(あるいは決断力のある)誰かの意見に引きずられがちになること」ということが見えてきます。これが前ページの最後の方で書いた「陥りやすい典型的なこと」の正体です。物件の見学の際、営業担当者とのやりとりから、その事業者が信頼できる相手なのかを見極めたい。担当者が決断をせかすようだと要注意。こちらの立場に立って、新居での暮らしにメリットがあることを、具体的にしてしてくれるようだといい
ですから「できるだけ早めに検討をし決断をしましょう」ということになるのですが、この記事が意図するのは、早めの決断を促すことではありません。せっかくそれなりのお金をかけて住宅を取得するわけですから、「余裕を持ってより良い住宅を取得することを目指しましょう」ということです。
新たな住宅を取得する目的は、「消費税が低いうちに」とか「できるだけ安く」ではなく、新しい住まいを得ることで、「今よりもっと快適・安全に」とか「幸せな暮らしをしたい」などという理由からであるはず。
時間的な制約があると、どうして住宅取得をするのか、という根本的なことを見失いがちになります。目の前にある選択肢の中だけで善し悪しを判断し、結果的に長期的な満足をおろそかにして、将来的に住宅取得そのものを後悔することになりかねません。
現代は多様性の時代といわれますが、住まい方だって色んなスタイルがあっていいはず。賃貸暮らしを続けることや中古住宅をリフォームして生活するなど、様々な選択肢があります。「住宅を建てない、購入しない」ということも頭に入れながら、住宅取得の検討をするくらいで良いのではないでしょうか。