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独身男の「生きづらさ」もわかってほしい

結婚しないでいると、「親がかわいそう」「結婚しないと一人前じゃない」と言われる男たち。今、彼らは少しずつ「そういう声がつらい」と声を上げ始めている。世間や組織からプレッシャーを受けるのは、女性だけではない。むしろ今の時代、男性たちも生きづらいと感じているようだ。

亀山 早苗

執筆者:亀山 早苗

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「親戚や近所がうるさい……」自営業・40歳男性

結婚が当たり前だと決め付けられる、つらさ。

結婚が当たり前だと決め付けられる、つらさ。

「親がかわいそう」「結婚しないと一人前じゃない」――結婚しないでいると世間や組織からプレッシャーを受けるのは、女性だけではない。むしろ今の時代、女性が周囲からとやかく言われることは少なくなってきたように思う。いや、もちろん言われる人も多いのだろうが、世間一般の見方として昔ほど責められはしないだろう。

「むしろ、今は男のほうが言われるような気がします」(カツヤさん)

そう話してくれたのは、カツヤさん(43歳)だ。父が始めた理容店で、自身も理容師として仕事をしているが、父は80歳を目前に引退。今は体調を崩して入退院を繰り返している。母は5年前に亡くなった。2歳年上の姉は、結婚して遠方にいる。

「親戚や近所がうるさいんですよ。『いいかげん結婚しないと、お父さんがかわいそうだ』とか、『跡継ぎはどうするんだ』とか。ほうっておいてくれよと思うけど、相手も心配して言ってくれるのだから、黙って聞くしかない。うちはお客さんがほとんど男性だし、知り合うきっかけもありません。僕自身、恋愛なんて10年以上していない。商店街の人たちも、『誰か紹介しないといけないなぁ』と、僕のいないところで勝手に話し合っているようで……。正直、めんどうくさいです」(カツヤさん)

カツヤさん自身、結婚したくないわけではない。徐々に小さくなっていく父に、孫を見せてやりたいとも思う。だが、「それと実際に結婚できるかどうかは別問題」と彼は小声で言った。

「どこか結婚が現実的なことに思えないんです。うちの店も、最近はお客さんが減っているし、このままだといつ潰れるかわからない。結婚より先に、食べていけるかどうかのほうが現実として直面している問題ですからね」(カツヤさん)


「上司に責められ、落ちこぼれ扱いに」会社員・39歳男性

「だから独身は……」と責められるモラハラは男性社員にこそ横行している。

「だから独身は……」と責められるモラハラは男性社員にこそ横行している。

「自営業ならまだいいんじゃないですか」(ユウイチさん)

仏頂面でそう言うのは、ユウイチさん(39歳)だ。彼は上場企業の会社員。30歳を境に同期がいっせいに結婚していったという。

「その次の波は35歳のときですね。そこで結婚できなかった僕は落ちこぼれ扱いです。上司は、『結婚していないから、オマエは仕事に責任感がもてないんだ』と責める。成績からいったら、それほど悪くないはずなんですが、『信用がおけないと思われるんだよ、独身男は』とも言われる。これってモラハラだと思うけど、そういうことを言うと、独身だから甘えてると……」(ユウイチさん)

昔は「男は結婚してこそ一人前」という価値観があって、「結婚して身を固める」という言葉も使われていた。今は死語と化していると思っていたが、企業の中にはまだそうした価値観が生き残っているようだ。

「女性社員は、けっこう独身が多いんですよ。いくつかの部署では女性部長もいるし、独身だろうが既婚だろうが、そこに会社側からの圧力はない。でも、男にはあるんです。独身男性が少ないから、声を上げることもできません」(ユウイチさん)

結婚するもしないも個人の自由だと思うが、それが通用しない場所が存在するということだ。男もまた、生きづらいなあと痛感する。

「会社では『僕だって焦ってるんですよ、相手がいなくて……』と笑いながら言っていますが、本当は結婚にあまり興味がないんです。でも、結婚したくないなんて言ったら、それこそ何を言われるかわからない。故郷の親に対してもそうですね。姉がいるから孫はいるんですが、母は『内孫が見たい』としょっちゅう電話で言ってきます。内孫とか外孫とか、関係ないだろうと思うけど。めんどうなので『まあ、そのうちね……』とモゴモゴ弁明しているような状態です」(ユウイチさん)


「結婚が当たり前」という価値観に疑問符

「結婚はいいもの」「どうしてしないの?」その素朴な疑問が独身者を追い詰めている?

「結婚はいいもの」「どうしてしないの?」その素朴な疑問が独身者を追い詰めている?

「結婚するのが当たり前で、それができない人間は一人前ではない」という価値観は、なんとも不思議だ。

独身の人には「どうして結婚しないの?」と尋ね、離婚した人には「なぜ離婚したの?」と聞くが、結婚していく人に「どうして結婚するの?」と言う人はいない。それは、結婚が絶対的な「いいこと」という価値観であり、「当たり前」だからだ。だから、それをしない人や壊した人には「どうして?」と尋ねるが、当たり前のいいことをしようとしている人には問う必要がないのだろう。むしろ、問うべきではないし、問うほうがおかしいと思われるかもしれない。

しかし、ひとりで生きようが、ふたりで生きようが、相手が異性だろうが同性だろうが、「その人のありよう」として受け止めればいいだけのことではないのだろうか。

もはや「結婚するのが当たり前」の時代ではない

したいと思わないが、したくないとも思わない。ただ、結婚の目的がわからないから積極的になれない気持ちは共通しているようだ。

結婚の目的がわからないから積極的になれないという気持ちは共通しているようだ。

カツヤさんもユウイチさんも、話した印象では決して「ヘンな人」ではない。

たまたま相手に巡り会っていないのか、あるいは恋愛や結婚に対するモチベーションが低いのか。ふたりとも、結婚しないと決めているわけではないが、どうしても結婚したいというわけでもないという状態。

結婚にはメリットがないと思うかを問いかけたら、ふたりとも、「メリットデメリットで結婚を考えるほうが不純ですよね」と言った。そしてユウイチさんは、「でも、結婚に明確な目的が持てないのは確かだ」と付け加えた。

今の時代、生活していくだけなら、ひとりでもできる。では、結婚してどうするのか、結婚したら何が変わるのか。

「親が嫌いというわけではないんですが、家族というものに憧れるような気持ちはもっていません。結婚とか共同生活とか子どもとか、そういうものに対してモチベーションが低いのは確かなんでしょうね」(ユウイチさん)

結婚は、人生の中での選択肢のひとつ。結婚しないことで生きづらくなる男性が少なからずいるというのは、なんとも気の毒だ。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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