家計の金融資産残高は1年半振りに減少
家計の貯蓄状況
中国を始めとする新興国経済の減速などを受け、株価が大幅に下落したため、保有する株式や投資信託の評価額が下落したことがその背景のようです。中でも株式は、2015年6月末比で11.7%の減少となり、2007年6月以来8年振りに回復した100兆円という残高を再び割り込む状況となっています。
株式は残高が大幅に減少した反面、投資信託は評価額こそ下落したものの、資金流入等により保有残高は前年比で5.8%増の91兆円となっています。
預貯金の増加率はあまり落ちていない
家計の金融資産残高が減少したのは株安が原因と言えますが、もう少し詳細に各商品について見て行くことにしましょう。物価に動きに関わらず、現金・預金は堅実に増えています。2014年9月末比では1.9%増の887兆円になりました。ただ、金額ベースでは2015年6月比6兆円の減少となっていますが、株式などの減少率が大きかったため、金融資産全体に対する割合は0.7%の増加の52.7%となっています。
著しく残高が減少したのは株式・出資金で、前年同期比では0.2%の減少となっています。前年同期比の減少はアベノミクスが始まって以来の出来事のはずです。
アベノミクスが始まって以来株価は大きく上昇したことから、一度調整が起こると値幅が出てしまう分、残高は大幅に減少してしまうようです。株式投資へのリスク・リターンの度合いが高まっていると言えそうです。
投資信託の残高も増加こそしていますが、対前年比の増加率は5.8%とアベノミクスが始まって以来の一桁増に鈍化しています。株安と共に為替も円高傾向に動いたことが増加率鈍化の要因と思われます。
保険・年金準備金もしぶとく対前年比で1.1%増加してその残高は444兆円になっています。残高自体は横ばいですが、金融資産全体に占める割合は、26.4%となっています。現金・預金、保険・年金準備金という2強はなかなか崩れそうになりません。
債券の保有減は止まらず
一向に残高の減少が止まらないのが債券です。減少率にブレーキがかかったように見えたのですが、再び減少率は加速して対前年比で11.3%の減少となり、その残高も25兆円まで減少しています。個人向け国債の償還がその要因と言われていますが、減少は29四半期連続ですから、かれこれ7年以上も続いていることになります。円高が進行したことにより、外貨建て資産の残高も減少しています。減少額は前期比1.9兆円と久し振りの大きさとともに、前期比では3四半期連続の減少となっています。為替相場は、対米ドルこそ円安気味に推移していますが、他の通貨に対しては円高気味に推移していることが影響しているようです。
2015年7月~9月期は私たちの年金(GPIF)も大きな損失を出しましたが、家計も同様に損失を出したようです。10月以降の株価上昇により年金は損失を取り戻しつつあると言われていますが、12月中旬には株価は再び下落に転じていることから、同期の損失を1期で取り戻すことはできない気がします。
家計も同様に損失を取り戻すのは難しいでしょうが、家計は企業とは異なり毎年決算が行わなければならないわけではありません。短期間で挽回しようと思うとリスク過多になりかねないことから、慌てずに挽回するようにしましょう。
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