以下はサンケイスポーツ報道からの抜粋です。
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杉良太郎、「下町ロケット」藤間社長演じきり心臓手術していた!
2015年12月19日 5時9分
サンケイスポーツ
20日放送の「下町ロケット」最終回で熱演する杉良太郎。心臓に病を抱えながらも“役者魂”で演じ切った
歌手で俳優、杉良太郎(71)が心臓からの血流が悪くなる大動脈弁狭窄症を患い、15日に東京都内の病院で大動脈弁の置換手術を受けていたことが18日、分かった。約3時間の手術は無事に成功し、快方に向かっている。杉はくしくも心臓の人工弁開発がテーマのTBS系「下町ロケット」(日曜後9・0)に出演中で、13日に自身の撮影をすべて終えてから手術に臨んでいた。
「下町ロケット」では大企業のトップとして既得権益にしがみつく上層部を一刀両断。時代劇も含め、世代を超えた痛快な演技で魅了する杉が心臓にメスを入れていた。
関係者によると、杉は15日午後、大動脈弁狭窄症に伴う大動脈弁の置換手術を受けた。約3時間に及ぶ手術だったが無事に成功。同日夕には麻酔から覚め、ホッとした表情で水を飲んだという。妻で演歌歌手、伍代夏子(53)も仕事を終え、病室に駆け付けた。
大動脈弁狭窄症とは、心臓の大動脈弁が硬化して血液が全身に回りにくくなる病。病状が進行すると、失神や心不全などを発症し、突然死する可能性もあるという。
1965年のデビューから芸能界を牽引する杉は、外務省から委嘱された日本ベトナム特別大使や法務省特別矯正監の業務もこなすなど多忙な日々を過ごしている。
これまで大病がなかった杉に“異変”が起きたのは8月中旬。和歌山県内でロケの仕事をした際に体調不良を訴え入院。心不全と診断され、今回の病も判明した。
くしくも同時期に「下町-」の制作陣から出演のオファーを受けた。体調を考えて一度は辞退したが、何度もアプローチする制作陣の熱意に心を動かされ、杉の役者魂が覚醒。医師と相談の上、出演を決断したという。
病を知りながら9月21日にクランクイン。撮影を最優先にし、自身の出番が終わる13日から2日後に手術日を設定した。
「下町-」は偶然にも置換手術を受けた心臓の人工弁開発がテーマ。最先端の技術開発に奔走する主演の阿部寛(51)らの熱演が人気で、杉も藤間社長役として重厚な演技で魅了した。
関係者によると、杉は共演者やスタッフに謝意を込めた手紙を託してから手術に臨んでおり、並々ならぬ思いで同作をやり遂げたようだ。
杉の所属事務所はサンケイスポーツの取材に「手術も無事に終えて回復に向かっています」と説明。年内に退院予定で、後日、杉のコメントを発表する。
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大切なドラマの撮影が終わり次第、急いで心臓手術を受けられた緊張感が伝わって来ます。その間、何も悪いことが起こらなかったのは幸いでした。
大動脈弁狭窄症はなぜ手術を急ぐ必要があるのか?
大動脈弁狭窄症は手術で治ります
大動脈弁狭窄症という病気は、文字どおり、大動脈弁が狭くあるいは開かなくなり、心臓が血液を全身に送りにくくなる病気です。
たとえば重症例では弁の前後の圧の差(圧格差と呼びます)が100mmHgを超えることもあり、極端な例では200mmHg超えさえ散見されます。仮に圧格差が150mmHgなら、血圧100mmHgを出すために心臓は250mmHgというとんでもない高圧を出さねばなりません。健康なひとの約2倍の血圧です。
このレベルになると心臓が出せる圧の限界が近く、不整脈その他何かのはずみで、心臓は対応できなくなっていきなり止まってしまうのです。つまりこの大動脈弁狭窄症は重症の場合、無理すると突然死してしまうという意味で怖いわけです。
普通に心臓が止まっただけなら、その場で直ちに心臓マッサージを正しく行えば、かつ救急車や救急外来での治療が円滑に進めば、救命できることはあります。
ところがこの大動脈弁狭窄症ではそもそも心臓の出口が塞がったような形になるため、心臓マッサージをしても血圧が出ず、マッサージの効果があまりないのです。
そうこうしているうちに3~4分の時間が経ってしまうと脳死となり事実上死亡に至ってしまうのです。
心臓手術で治療すればほとんどの場合で救命可能
人工弁の一例です
治療によって治る病気なのに治療を受けることなくいのちを落とす、これだけは何としても避けたいところです。そのため杉さんの場合も、重要なドラマ撮影が終わり次第、すぐ手術を受けられたものと推察されます。
それではこの大動脈弁狭窄症はどうやって予防できるのでしょうか。残念ながらまだ決め手と言えるほどの予防策はありません。80歳以上の高齢者に急増する病気であり、加齢と動脈硬化が弁に起こるためと考えられているため、せめて減塩や血圧の調整、コレステロールなどの脂肪の調整などはやる価値はあるでしょう。しかしこれをやれば大動脈弁狭窄症は予防できるという決め手はまだありません。
早期発見のコツ
心エコーで確実に診断がつきます
自覚症状も診断の手がかりになることが多いです。大動脈弁狭窄症の症状としては1.胸痛、2.息切れ、3.失神発作の3つが挙げられます。これらの症状がでるレベルになると1年以内の死亡率が50%を超えるというデータさえあり、突然死を含めて危険な状態です。
こうした症状がひとつでもあれば、医師に相談されると良いでしょう。とくに循環器内科医が良いです。
治療は
大動脈弁狭窄症が軽いうちは、無理をしない、あるいはお薬で調整ができます。重症化し、とくに上記の症状があればそれは心臓手術の適応となることが多いです。
弁が硬くなることが多いため弁形成には限界があり、手術は通常大動脈弁置換術になります。65-70歳以上ではウシやブタなどの生体弁が勧められ、それ以下の若いご年齢ではどちらかと言えば機械弁です。
ただし10代、20代などの若年者の場合は二尖弁など弁の狭窄の仕方が高齢者とは違うこともあり、またこの年齢の方は機械弁も生体弁もそれぞれ問題や課題があるため、エキスパートならまず弁形成術を試みることがあります。
いずれにせよ、大動脈弁狭窄症で心臓手術が必要かもと言われたら、経験豊富な心臓外科医にセカンドオピニオンとして意見を求めるなどして的確な方針を立てるのが勧められます。
最近の方向
TAVIはカテーテルで入れる生体弁です
しかしTAVIの場合は上記の脳梗塞がやや起こりやすく、しかもその生体弁は長持ちしない、つまり早い時期に再手術になりかねないといった課題も指摘されています。
MICS手術後の傷跡です
終わりに
ともあれ大動脈弁狭窄症は重症になれば突然死もある怖い病気ですが、確実に治せる病気でもあります。こうした病気をなるべく予防し、予防できなくても早く適切に治療することでそう怖い病気にはならないと思います。杉良太郎さんの早いご全快と仕事復帰を祈るとともに、この記事が皆さん方やご家族、ご友人のいのちを救う、あるいは安全につながるのであれば大変うれしいことです。
■参考
心臓外科手術情報WEBの心臓弁膜症のページ