満天の星空を拝むべく“満天”へ行く
東京に住んでいると星を見るのもラクではない。申し訳ない、いきなりウソをついてしまった。記者は千葉在住である。しかし、千葉でもけっこう東京寄りなので、状況はあまり変わらないと言い張ろう。街頭やビルの明かりで照らされた東京の……じゃなくて千葉(東京寄り)の夜空は、じっと目を凝らしてやっと星が見えるか見えないかという状況だ。満天の星空など望むべくもない。
しかし、記者は星が見たい。見まくりたい。決して、2015年12月1日にリニューアル・オープンを迎えた「コニカミノルタプラネタリウム“満天”in Sunshine City」の内覧会案内が編集部に届いたから、こんなことを言っているわけではない。
ともかく、奇妙な運命の巡り合わせに感謝しつつ、満天の星空を拝むべく“満天”へと足を運ぶことにした。
ふかふかの雲シートに年甲斐もなくはしゃぐ
“満天”の所在地は東京・池袋にあるサンシャインシティの屋上。ただでさえ若いカップルが多い地域なことに加えて、同フロアにはサンシャイン水族館もあったりする。中年の記者にはいささかオシャレすぎるロケーションだ。履き潰してボロボロになった靴、色あせたカバン……ふだんであれば「記者仕事の証」として、ともすれば誇らしさすら感じるが、このときばかりは恥ずかしさでいたたまれない気持ちに。「穴があったら入りたい」ではないが、記者は足早にプラネタリウムの暗闇へと身を投じた。内覧会に登場した“満天”支配人の平井明氏によれば、今回のリニューアルは同施設にとって4度目のこと。その内容は、ドームスクリーンの全面張り替えに始まり、超高輝度LED光源を採用した光学式プラネタリウム「Infinium Σ(インフィニウム シグマ)」の導入、プレミアシートの設置とかなり大規模なものとなったようだ。なかでもとくに注目なのが、「芝シート」と「雲シート」の2種類が用意されたプレミアシートだろう。
ホール前面に展開されたその特別な空間は、中年記者が言うと若干気持ち悪いがじつにロマンチック。芝シートはその名の通り、芝生をイメージした地べたにゴロリと寝転がって、ドームに映しだされたショーを楽しめるというもの。野外での天体観測に近いシチュエーションが楽しめそうだ。
もうひとつの「雲シート」も最高にロマンチック。雲のように丸くてフワフワしたベッド型のシートで、カップルで利用するのにジャストなサイズである。僭越ながら記者も軽くゴロンとしてみたが、適度な弾力に清潔感のある布地はまるで高級ホテルのベッドかのよう。「……おお、これはいい」と体をポワンポワンとバウンドさせてみたが、カメラをかまえた他プレスの視線に気づいてすぐにやめた。確かに、オッサンの寝姿は絵として最悪である。
リニューアル記念作品は「感覚の解放」をテーマにした2作
いくら空間がロマンチックとは言え、プラネタリウムは映像もセットで楽しむ場所。その点については……安心してください、ハイクオリティーですよ。唐突に最先端の流行ギャグをぶち込んでしまい恐縮だが、“満天”ではリニューアルを記念して「感覚の解放」をテーマにした2作品を用意している。今回の内覧では、その一部も見せてもらうことができた。
「南極ヒーリング~この地球(ほし)の果てで~」は、南極の星空とアロマの香りが楽しめるという、一粒で二度おいしいグリコみたいな作品だ。
女優・多部未華子の優しいナレーションに沿ってドームに映しだされた南極の景色はじつに心癒される。白夜、サンピラー、彩雲、蜃気楼といった自然現象に目を奪われ、ペンギンやアザラシといったカワイイ動物たちの登場には思わず頬が緩んでしまう。
南極の香りは知らない記者だが、爽やかで涼しげなアロマの香りは確かに南極っぽい。そして日中の映像が終わり、ドームに満天の星空が映しだされるころには、アロマの効果もあって完全にリラックスモード。このときほど、直帰したいと思ったことはなかった。
もうひとつの映像作品は、人気音楽グループ「サカナクション」とコラボレーションした「サカナクション グッドナイト・プラネタリウム」。満天の音響システムのためにサラウンド化した曲の数々が幻想的な映像とともに映し出される様子は、プラネタリウムというよりはクラブにいるような感覚だ。さすがに踊り出すわけにはいかないが、足でリズムを取るくらいなら許されるだろう。
ちなみにナレーションは、サカナクションのボーカルである山口一郎が担当。落ち着いた声はプラネタリウムの暗闇にじつにしっくりと来る。
東京で星を見るのは、そんなに難しくない
サンシャイン、プラネタリウム、南極、サカナクション……どれも自分には無縁と思うワードだったが、いざ行ってみると今回の“満天”取材は直帰できなかったことを除けば非常に満足いくものだった。なによりも、千葉(東京寄り)では到底見ることができない素晴らしい星空を、全身で浴びるように楽しめるのがうれしいではないか。ただ、一点だけ注意してほしいことがある。今回は内覧だったので、記者も雲シートで無邪気にバウンドしたりできたが、あれを一般客としてひとりでやるのは正直かなり恥ずかしい(リクライニングであれば問題はない)。もし“満天”を満点に楽しみたいのであれば、ステキなパートナーといっしょのほうがいいだろう。
まあ記者の場合、ステキなパートナーは千葉の夜空の星よりもずっと見つけづらいんだけど。
[関連リンク]
コニカミノルタプラネタリウム“満天”in Sunshine City公式サイト