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傾斜マンション問題が今後の住宅取得に示唆すること

横浜の傾斜マンション問題が収束の気配をみせていません。これから住まいの取得を目指す皆さんにとって不安に感じられると思いますが、皆さんにとってこの問題から見えてくる重要なことについて考えていきます。

田中 直輝

執筆者:田中 直輝

ハウスメーカー選びガイド

横浜市の傾斜マンションから始まった杭のデータ偽装問題。全国にその影響が波及し、一向に収束の気配がみえません。住宅を含む建設業界や不動産業界に対する不信感が募り、暗い影を落としてるように感じられます。この問題が私たち消費者に示唆するものは何なのでしょうか。戸建て住宅にも関係する部分があると思われますので、今回、私の見解を希望も含めて皆さんに提示した上で、一緒にこの問題について考えてみたいと思います。

あるリノベーションマンションで残念だったこと

まず、建設・不動産業界の住まいに関するモノの見方が表れていると思われる事例を紹介します。先日、私はあるリノベーションマンションの販売現場を見学する機会がありました。結論を先にいうと、大変残念な気持ちになりました。

マンション施工中

横浜の傾斜マンション問題は、住まいの安全性や施工の健全性などについて、私たちに注意喚起を促す出来事になった。写真は施工中のマンション(イメージ)

そのリノベーションマンションは千葉県某市にあります。コンクリート造3階建て、以前はある企業の家族寮だった建物で、築年数は30年足らず。それぞれの住戸が広く、1棟まるごと今の暮らしに合わせてリノベーションをした(する)のが特徴です。

リノベーションというのはこのように建物や部屋をまるごと改修することをいうときに一般的に使われます。この建物では設備や内装を全て取り払いスケルトン状態にして、最新の間取りや設備、内装材を導入するということをしています。

内装のテイストが異なる6つのモデルルームを用意して、お客さんの好みに合わせて工事を行うという手の込みよう。販売会社の方は「新しいマンションとして販売する」と話していました。

確かに、間取りや内装そのものは一定以上のレベルにあると感心したのですが、「大変残念」と思ったのが、開口部の断熱性の強化が行われていなかったことでした。つまり、窓が建設当時そのままだったのです。

「それくらいいいじゃない。しょせん中古マンションなんだから」と思われるかもしれません。でも考えてもみてください。いくらリノベーションマンション、中古マンションといっても、それを購入したお客さんは、その後20年~30年住み続けるわけです。

窓の断熱性強化がリノベーションになぜ必要なのか

だったらリノベーションをするタイミングで、開口部の断熱性強化をするおくべきでだと思いました。開口部の断熱性を高める工事は主に単板ガラスのサッシを、断熱性の高い複層ガラスサッシに替えたり二重サッシにすることが挙げられますが、購入後だと高額な工事費用がかかるのが通常です。

スケルトン

千葉県内にあるリノベーションマンションの内部。内装や設備が取り払われたスケルトン状態にされ、ここから間取りの変更や内装。設備の刷新が行われる。しかし、窓については建設当時のままにするという(クリックすると拡大します)

特に今回のような分譲マンションの場合、後から工事をすると、管理組合の了解が必要になるなど、面倒な作業も発生します。このようにリノベーション工事の際に開口部の断熱性を高めておく方がお客さんにとってはメリットが多いわけです。

この事業者は戸建て住宅も販売しており、住宅の省エネ性を向上させることに熱心に取り組んでいますし、リフォームもやっていて開口部の断熱強化もメニューにあります。ですので、住宅の省エネ性や断熱性を高める必要は認識しているわけです。

なのにこのリノベーションマンションでは、その配慮が行われていなかったのです。おそらくそうすると販売価格に上乗せするしかなかったからでしょう。ですが、私にとってはお客さんに対して不親切だと思われ、さらに販売する事業者のお客さんに対する思いやりの足りなさを感じたのです。

ただ、この事業者の名誉のため申し上げておきますがでは建物について、コンクリートの強度を確認するため非破壊検査を実施しているとのこと。要するに耐震性については十分なレベルにあるとのことです。

こうしたことを確認しているというのは、他のリノベーション事業者には少ない誠実さといえるのではないでしょうか。ただ、この事業者に対して、私は非常に期待している部分があったので、残念に感じられたのです。

さて、ここまで読んで「この話と傾斜マンション問題に関連性があるのか」と思われるかもしれません。しかし、私は大いにあると思っています。それについて次のページで書いていきます。
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