リアリティのあるツッコミとは?
「天使と少年」に続く「卓球部の先輩後輩」コントでも、複雑かつリアルなやり取りが展開されます。後輩がスマッシュを決めたときのポーズは先輩をいらつかせるものの、「話の分かる先輩」という立場を守るために、笑顔で弱々しいツッコミしかできない。実社会での上下関係でもしばしば見られる光景だけに、大勢の観客に受け入れられたんだと思います。また、ロッチの「試着室」もバンビーノの「魔法使いと犬」のコントも、同じように緩やかな対立構造の中でストーリーが進行しています。あたかも敵対してるかのような対立構造のコントばかり見てきた観客にとっては、今までに体験したことのない新鮮な笑いとして惹かれるものがあったのでしょう。
これからのトレンドは「優しいコント」
ここまではツッコミ側の工夫について述べてきましたが、実はもう一方の側(広い意味でのボケ役)についても、重大な共通点が見られます。それは、どれだけ相手を振り回しても悪意や敵意が感じられないという所です。むしろイノセントな存在と言ってもいいかもしれません。イノセントな登場人物(犬も含め)に振り回されるツッコミ役。このパターンからは今後、さらなる「優しいコント」が生まれるはずです。これまで同じタイプのネタがダブついたことで、ジャンルごと収束してしまった例もありますが、この原則を生かせばバリエーション豊かなコントが量産できるはずです。
この新しい笑いの流れを、おそらくキングオブコントに参加した全芸人が感じ取ったに違いありません。今後はその他の芸人も新たな笑いに取り組むのではないでしょうか。特に新たなコント作りに悩んでいる若手芸人には、ぜひとも原則を生かしつつ、自分達の笑いを作り上げてもらい、お笑いブームの再燃を目論んでいただきたいものです。