原油先物価格、WTIとは?(2016年最新版)

原油価格についてのこれまであまり知られなかった内容をご紹介します

急落が続き、ますます注目の高まる原油価格ですが、これまであまり知られなかった内容をご紹介します

原油のニュースでよく「WTI」という言葉を聞きますが、これはウエスト・テキサス・インターミディエート(West Texas Intermediate)の略で、ニューヨークマーカンタイル商品取引所(NYMEX)で取引されている、原油価格の先物です。このテキサス産の軽質(硫黄が少なく、精製しやすい最高級)原油が、俗に言われる「原油価格」の指標となっており「原油価格」=WTIという感覚で日本では報道されることが多いです。

しかし、実際にはWTIは米国の狭い一部地域でのみ産出され、しかも米国内でしか消費されない石油で、欧州や日本には一滴も入らない「ローカル石油」なのです。しかし、世界で最も先物の(注:現物ではない)売買量が多いために新聞等で原油価格と言えばWTIが相場となっているものです。

WTI原油はオクラホマ州クッシングにある貯蔵庫で受渡がされると決まっています。他の場所ではできません。したがって、米国クッシングだけの個別の理由でWTI原油価格は上下動します。例えばハリケーンが上陸すればクッシングの在庫は反対にすぐ底をつきかけます。そうすると原油の中でWTIだけが暴騰するということがこれまで何度もありました。

現在、クッシングの備蓄量は6342万バレル(2016年1月22日時点)です。アメリカは1日で2000万バレル以上の原油を消費しますから、3日分で満杯となってしまいます。同じ倉庫でもテキサスとルイジアナの地下にある政府の戦略備蓄庫は約7億バレルも溜め込めます。それに比べればクッシングは小さい貯蔵庫であり、半日分でも在庫が増えたり減ったりすればWTIの価格が上に下へと乱高下し、そしてそれが「世界の原油価格」となる構図です。

各原油価格の指標は消費地の経済状況を反映する

ところで、世界全体で見ると、WTIを含め、大きな消費地別に3つの大きな価格決定の指標となる原油価格があります。北米の指標となるWTI(原油価格)、欧州の指標である北海ブレント原油価格、アジアの指標である中東ドバイ原油価格です。日本は当然アジアに属し、たとえば、東京工業品取引所でも、輸入量が多い中東ドバイ原油価格を指標として原油先物価格を算出しています。

■WTI、北海ブレント、中東ドバイ原油価格推移(2016年1月22日時点)

油質でいえば、最も重質で使いにくいのが中東ドバイ原油で、テキサス産のWTIは最も軽質で硫黄成分も低い為に最高級であり、その中間が北海ブレント産といった構図です。もともと、品質の高いWTIが他の2つの原油よりも数ドル分のプレミアムがついて高く取引されていました。しかし、2010年頃から、中国の原油需要が強かったこと(=中東ドバイ原油価格が強くなる)、クッシングに新規パイプラインが稼働して原油の流入が増加し、原油貯蔵容量も増えたこと(=WTI原油価格が弱くなる)、北海油田の生産量減少によって需給が締まったことやリビアからの供給中断(=北海ブレント価格が強くなる)といった要因によってWTIが逆に安く推移していました。

しかし、2015年後半から、中国経済のスローダウンによる需要低迷(=中東ドバイ原油価格が弱くなる)、米国経済の活性化(=WTI原油価格が強くなる)といった要因から、WTI原油価格と中東ドバイ原油価格の差が逆転してきたところです。

原油市場は供給過剰状態続くも、変化の予兆も

シェールオイルの開発によって米国の原油供給は過去最高水準で、米国の貯蔵能力の70%近くにも達しています。貯蔵容量は拡大しているものの、原油価格が安価なうちに書い溜めておこうとする思惑もあり、貯蔵施設は不足気味です。下図はクッシングの貯蔵量の推移ですが、こちらも過去最高水準となっています。貯蔵量は長期的に拡大を続けていますが、それでも、貯蔵施設は不足気味の様子です。
クッシングの在庫量推移

クッシングの在庫量は過去最高

ただ、供給過剰になっている状況は、世界の原油市場でも同じようなことが言えます。下記は世界の原油の需給状況ですが、供給量(下記の青線)は需要量(下記の赤線)を上回っている状態が続いています。
世界の原油は供給過剰の状態が続いているが原油の供給量も減少し始めている

世界の原油は供給過剰の状態が続いているが原油の供給量も減少し始めている

もっとも、現在の原油価格では採算がとれない採掘企業も多くなってきて、破綻企業も増加してきています。実際、上図のチャートを見ても供給量は減少してきているので、いずれ供給が需要を下回り、原油価格は反発すると期待できますが、不採算の採掘企業の整理がある程度進んでからでないと、供給量の縮小は期待できないかもしれません。今は先物の予約によって採算の取れている企業もありますが、時間の問題でいずれ、やっていけなくなるところが増えると思います。それが3ヶ月先なのか、半年後なのかはまだなんとも言えないところですが、需給状況は年内にも反転する可能性があることを覚えておきたいところです。

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参考:米国株通信

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