大いなる「伸びしろ」を評価されて、ドラフト1位指名
「実際、すごく緊張しました。名前を呼ばれて“プロへの扉が開くんだ”と安心した気持ちと、さらに緊張感が高ぶりました。対戦したい投手は日本ハムの大谷投手です。目をキラキラさせて見ていた選手と対戦できるチャンスをもらったことが嬉しいです」
子供のような笑顔を見せ、チームメートに胴上げされると、その顔はさらにクチャクチャになった。
外れとはいえ、1位指名は想像以上の高評価だ。守備範囲の広さ、50メートル5秒96の快足を活かした走塁は、すでにプロ基準に達している。強肩でもある。しかし、バッティングは粗削りで、プロレベルではない。その点を梨田新監督、星野副会長も認めているが、それでも高評価を得たのは、大いなる「伸びしろ」と次のような強心臓だ。
会見の席上でメジャーへの夢を語る
オコエは「1年目から一軍で活躍して、日本でトップの選手になる。遅くてもFA権の取得までにはメジャーに行けるような選手になりたい」とキッパリ言い切った。仰天発言だろう。ドラフト指名当日に「メジャー志望」を口にした。しかも、「楽天さんとの今後の交渉次第」とまで続けた。慌てて米沢監督が“火消し”をした。「両親も含めて日本のプロ野球で頑張りたいということで一致しています。あくまでも日本のプロ野球で頑張って、結果を残していくことが一番で、成績を積み重ねていく中で、メジャーへの夢の話を進めていけばいいのではないでしょうか」
楽天は、結果的に海外FAを行使した岩隈久志(現マリナーズ)も前年はポスティングを認めたし、ヤンキースへ移籍した田中将大に関してもポスティングを認めるなど、メジャー移籍に関して理解のある球団だ。当然、入団交渉の際、将来のメジャー移籍に関する話が出ても不思議ではないが、この晴れの日に口にすべきではない。それだけオコエが自分に自信を持っている証拠だとしたら、これほど頼もしいことはない。
オコエの交渉権獲得に「相当期待したい。いい“お声”をかけたい」と得意のジョークで喜びを表現した梨田監督は、翌23日、東京都江戸川区の関東第一高校を指名挨拶に訪れ、オコエと初対面し、今度は「“るい”に出るように、出塁が多くなるように期待しています」と冗談を言った。この言葉遊びに気付かなったオコエは、「遠回しに打撃面を上げろという意味だと思うので、打撃面を磨きたい」と真面目に真摯に受け止めた。
オコエは走攻守の理想の選手を、走は巨人の鈴木尚広、攻はヤクルトの山田哲人、守はメジャーリーガーのイチローと元メジャーリーガーの新庄剛志という。攻の山田は今季、「トリプルスリー」を達成。オコエが将来、「トリプルスリー」をマークするほど成長すれば、もちろん、メジャーは放っておかない。