住宅内の温度を快適な温度に保つことも大切
照明は調光機能があるものにして寝室全体を暗めにすることで、できるだけ眠りやすい状況を作っておきましょう。例えば、読書をする習慣がある方なら、寝室全体を暗くしてベッドの脇に読書灯を用意するなどしておくと、寝付きが良くなるはずです。かつては「暗いところにいると目が悪くなる」といわれ、そのためリビングなどは明るい照明が一般的だった。しかし、睡眠の質を重視するなら、例えば寝室や勉強部屋も照度を落とした方がよいだろう(クリックすると拡大します)
特に高齢者は要注意。夜中に目覚めてトイレに行く際、温度差が30℃以上にあり、それがヒートショックを起こす原因となり危険です。寝床の中の温度は体温と同じくらいですが、トイレは冬が場には0℃になりますから。
ところで、寝室の改善だけではよく眠れる住環境づくりは不十分、という調査結果があります。セキスイハイム(積水化学工業住宅カンパニー)の調査会社・住環境研究所がまとめた「寝る2時間前に過ごす空間の光環境の変化による睡眠状況の改善と精神の健全性への影響を検証」という調査です。
寝る2時間前に過ごす空間(主にリビング)の光環境について着目したもので、照度を50ルクス以下、さらに蛍光灯を変更したグループでは、変更なしのグループに比べ入眠時刻・起床時刻とも前倒しになった、つまり早寝早起きになったそうです。
このほかアンケート調査では、光環境を変更したグループでは「夜間に50ルクス以下の環境で過ごすことについて、「最初は暗いと思ったが慣れれば問題はなかった」が58%で「暗すぎた」が42%、「普段より暗い環境で過ごしたことで良かったことがあったか」についても「良かった」が58%、「特になかった」が42%となったそうです。
アンケートの結果にあまり大差はみられず、調査対象人数も23人と少ないのでちょっと微妙な調査結果ですが、これは実際の住宅で行われた調査。このような調査はこれまで行われていなかったため、貴重なものだと思われます。詳細はこちらをご覧ください。
良い睡眠を得るために建物全体の環境改善を考えよう
で、ここで少しイメージしていただきたいのがホテル、中でも高級ホテルの居住環境です。ホテルというのは住まいと違い、睡眠に特化した居住環境となっているのが一般的ですが、その照明は直接照明(蛍光灯など)はほとんどなく、間接照明中心です。しかも調光ができる照明も用意されていることがほとんど。全体的に暗めの室内となっていますが、かといってそれで問題を感じることはないはずです。この調査では、ホテルの中のように寝る前に過ごすリビングのような環境の照明に工夫することで、眠りのための準備をした方が良いのでは、ということを私たちに伝えているのだと思います。
リビングの照明にも調光ができる照明器具を用意して、リラックスできるようにしてみてはいかがでしょうか。そのような照明器具はすでに普通に売られていますので、今住んでいるリビングにも取り入れやすいはずです。
要は、より良い睡眠を目指すなら、寝室だけではなく、リビングやトイレなどを含めた住まい全体の環境を改善することが求められるということです。
近年、ハウスメーカーでは住まい手の睡眠の質を高め、それにより健康な生活を可能にするよう様々な研究をし、その成果が数多く見られるようになりました。
例えば、ITやセンサー技術を用い、タイマーで起床時間を設定しておき、自動的にカーテンを少しずつ開いたり、次第に音や照明を強くするなどして自然な起床を促す仕組みも開発されています。
ベッドに心拍計などを組み込み、それにより体調管理ができるシステムなども最近は開発されています。新築やリフォームの際に、睡眠の観点から色々と相談して、提案の質を見極めてみてはいかがでしょうか。