丸太を用いた液状化対策を取り入れた分譲住宅地
所在地=千葉市美浜区真砂3-14-1開発面積=16544.85平方メートル
区画数=97区画
建築物=耐震木造住宅「MJ Wood」(エムジェイウッド)
この工法は防災土木技術に高い定評と実績があるという飛島建設が開発したもので、すでに公園や集会所、戸建て住宅などで工事の実績があるそう。基本的な仕組みは直径約15cm、長さ約4mの丸太を1区画あたり約140本、1mピッチで打設する(打ち込む)というものです。
飛島建設の担当者によると、「この場所は昭和38年までは浅瀬の海で、昭和45年ころに埋め立てられた」とのこと。元々海だった緩い砂の地盤だった場所にこれだけの丸太を打設することで、密度が高い地盤へと改良するというのが、この工法の基本的な考え方です。
前ページで「地盤を押し固めて液状化をしないようにする施工」と書きましたが、これは「サンドコンパクションパイル工法」という工法で、緩い砂地の地盤を密度の高い砂地の地盤に変えるという点では、丸太打設工法と基本的に同じ原理です。
液状化対策として最も実績がある工法ですが、大型の振動機を使用するため振動や騒音が大きく、大量の残土が発生するという課題がありました。このため、住宅地の造成にはあまり適していないといわれています。
一方、丸太打設工法は大型の振動機を用いないため騒音などが発生しないこと、また残土も出ないため施工コスト的にも優位性があるとのことです。近年は建設コストが上昇傾向にあり、残土の処理費用も高騰しているので、この工法により地盤の液状化対策費用を抑えられることは、最終的にメリットになるはずです。
地盤補強にも波及する「エコ」のトレンド
さて、この工法で用いられるのは当然、樹木というわけですが、「腐ったりしないの?」という疑問もわいてきます。ですが、この点もクリアされています。というのも、丸太は地表面から5mの深さ、水がヒタヒタのところにまで打設されます。そこまで打設すると、空気が無いため木を腐らせる菌やシロアリが発生せず、長期的な耐久性が確保されます。大昔の樹木が健全な状態で発見されることがありますが、それと同じことなのです。
丸太打設工法には「カーボンストック」という言葉がつけられていいますが、これは地中に丸太を埋め込むことで二酸化炭素(CO2、カーボン)を貯めておく効果があるということです。
コンクリートや鉄を杭として打設する方法もありますが、これらは生産時にエネルギーを大量に使う素材。そういう意味で丸太を活用することは省エネや化石燃料代替効果もあるそう。ちなみに丸太は千葉県産で、これにより地域木材の利用促進、森林の活性化効果も期待されるといいます。
要するに、丸太打設工法は液状化対策という安心・安全の確保だけでなく、地球環境保全というエコの考え方などもプラスされているという点が大きな特徴なのです。住まいとエコは今や切っても切れない関係ですが、地盤の改善にまでエコの配慮があるというユニークな事例なので紹介してみました。
地盤や地盤補強は私たち消費者にとって見えづらい部分であり、ですから普段は一般的には関心が薄いと思います。ですが、水面下ではこのような技術革新もあり、私にはこの部分でも住まいづくりが進化しているのだな、と新鮮に映りました。
東日本大震災からもうすこしで5年となります。また新たな大震災の発生も懸念されています。これから住まいの建築や購入を検討されている皆さんには、ぜひ基礎も含めた住まいの足元にも注目していただきたいと思います。
事実、この部分にこだわりを持つハウスメーカーに優良な事業者が多いことは、確かなことですから。