保険のブリッジはルールの範囲内で
1本抜歯した後に前後の歯を被せて歯があるように見せるのがブリッジ
この時に健康保険を利用する場合は、当然コストの関係で制限される部分があります。もっともわかりやすのが素材的制限(セラミックは使用できないなど)、そしてつなぎ合わせる歯の場所や、抜いて隙間になった本数などの関係性です。さらに精度などは、目に見えない部分で自費に比べると大きな違いになっていることもあります。ただし健康保険が適応されれば、負担割合が3割や1割などで済むため、保険で作ることも多いのも事実です。
今回説明するのは、単純に素材的な違いというケースではなく、1本抜歯後に、前後を1本づつかぶせて作るブリッジが保険治療ができないケースについて説明します。
最もブリッジにしにくい歯は「犬歯」
前歯では、歯の根の長さをが長いほど、横揺れや荷重に対して抵抗性があります。奥歯では、歯の根の長さは前歯より短いこともありますが、太さが太かったり、根が2~3本に枝分かれしているため、歯と骨の接触面積が前歯より多くなっています。これらは歯の抵抗性の指数として表され、前歯が指数2、犬歯が5、奥歯が6などの指数で表示されます。この歯と骨の接触面積が多いほど外力に抵抗することができるため、ブリッジの土台にすると有利となります。
実は犬歯は、根も長く、太さも太いため、奥歯に次いで2番目に保持力が強い判定となっていて、ブリッジの土台にするには最適な歯とされています。しかし逆に犬歯が抜歯となり、ブリッジを作成しようとするときに、その指数を維持するためには、土台となる歯の指数も大きくしなければなりません。
しかし残念ながら一つ前にある側切歯(前歯のすぐ後ろ)は、なんと犬歯の5分の1の抵抗性しかない指数1で、口の中でもっとも低い指数です。このため犬歯が抜歯されたときには、前後の歯1本づつでブリッジを作ることができないのが保険のルールとなっているのです。
犬歯抜歯後の治療の選択について
犬歯抜歯後のすぐ隣の歯が残っている場合、考えられる治療法の選択は、次の4つの方法になります。■義歯(入れ歯)
健康保険を利用して、前後の歯を削って被せることなく作ります。前後の歯は、バネと呼ばれる金属の針金のようなものが巻きつく形となります。しかし食後などに取り外して洗わなければならなかったり、入れ歯が小さいために外れて飲み込んでしまうトラブルも考えなくてはならないため、作ることはできますが、この選択は限定的です。
■自費のブリッジ
保険のルールでは不可能なブリッジも自費で作るのであれば問題なく作成することが可能になります。前歯のブリッジですから、自費の白い歯を最低3本作らなくてならず、費用も保険に比べると高額となります。さらに指数をを少なく設定すれば、土台にかかる負担は増えることも考えなくてはなりません。
■保険のブリッジ
「えっ、犬歯を抜歯しても保険でブリッジができるの?」実は作ることは可能です。上記で説明している通り、犬歯の前方の側切歯の指数は1ですが、これにさらに前方の一番前の前歯を連続してブリッジの土台として繋げることで、保険を利用してブリッジすることができるのです。
つまり、前歯、側切歯、第一小臼歯の3本を土台として、犬歯を含む4本のブリッジとして制作するのです。
ただしこれを行うためには、正面の大きな前歯とその隣の側切歯、犬歯の後方の第一小臼歯の3本を削って被せなくてはなりません。1本の歯を失ったために、最低2本の歯を被せる必要になるのがブリッジですが、この場合の保険のブリッジでは、さらに一番目立つ前歯正面の歯を削って被せなくてならなくなるのです。
この前歯2本がすでに被せてあれば、比較的負担が少なく保険のブリッジを作ることが可能ですが、もし健康な歯であれば、わざわざ削って被せることに抵抗を覚えるかもしれません。
■インプラント
前後の歯を削らずに抜けてしまった犬歯のみを作ることができるのがインプラントです。インプラントでは、抜けた犬歯の部分に人工の歯根を埋め込んで作るため、どの歯も削らずに歯を元の本数に戻すことが大きなメリットとなります。
費用は高額ですが、自費のブリッジでは被せる部分が3本必要になるのに対して、インプラントは1本で済みます。そのためこの2本分の費用が人工歯根の埋め込み部分の費用から差し引くことができると考えれば、歯を削らなくて済むメリットも加算して、それほど飛び抜けて高額と考えなくても済みます。
これらの治療法は、費用負担と歯を削ることへの抵抗感の有無などで、どれを選択するか人によって大きく異なります。そのため治療の際には納得できるまで十分に質問や説明を受けることをオススメします。