冬を前にした一瞬の煌めきの世界へ
紅葉シーズンは、やっぱり京都へ行きたくなります。京都の紅葉は、多くの場所で、例年11月中旬~下旬頃にかけて見頃をむかえます。今回は、数ある京都の紅葉の名所の中でも市街地から近くて出かけやすい、東山の永観堂(えいかんどう)から、人気の散歩道「哲学の道」を銀閣寺にむかって歩いてみたいと思います。
それでは、冬を前にした一瞬の煌(きら)めきの世界へ、出かけましょう!
京都有数の紅葉の名所 もみじの永観堂
まず、目指すのは「もみじの永観堂」と呼ばれる、京都有数の紅葉の名所「永観堂 禅林寺」。京都駅から永観堂方面に向かうバスもありますが、今回は京都市営地下鉄東西線の「蹴上(けあげ)」駅から歩いていきます。途中、南禅寺の大きな山門前を通りますが、南禅寺境内の紅葉も見事に色付いているのが見えます。
南禅寺門前から鹿ヶ谷(ししがたに)通りに入り、歩を進めると、ほどなく永観堂の門前に到着します。
現在、永観堂のある辺りは、平安時代の昔から紅葉の美しい場所として知られていたようです。
平安時代初期、この地には、文人貴族の藤原 関雄(ふじわらのせきお 805~853年)の屋敷がありました。『古今和歌集』に収録されている関雄の和歌、
おく山の 岩がき紅葉 散りぬべし 照る日の光 見る時なくて
は、屋敷の紅葉が風に舞い散る様子を詠っています。しかし、この和歌は、世間の栄光に浴することなく、ひっそりと世を去りゆくであろう自分の身の上を散りゆく紅葉に重ねているため、どこか寂しげに感じます。
関雄の死後、屋敷跡に建てられたのが、禅林寺(永観堂の正式名称)ですが、今に続く、「永観堂 = 紅葉の名所」のイメージは、関雄のこの和歌に依るところも大きいように思います。
さて、境内に入ると本当に一面の紅葉です。その数、3000本ともいわれ、特に美しいのは放生池のあたり。
また、境内背後の山の中腹に、紅葉に抱かれるようにして立つ「多宝塔」の美しさにも目をひかれます。
この多宝塔の前までは、「臥龍廊(がりゅうろう)」という、山の斜面に設えられた、あたかも龍が寝そべるような姿の廊下を伝って登ることができます。
「臥龍廊」を登りきると、多宝塔の前からは紅葉に彩られた永観堂境内と、その向こうに広がる京都市街を一望できます。これは、紅葉シーズンの京都に来たなら見逃せない景色ですね。
そして、夜は紅葉のライトアップが行われます。昼の陽の光の下で燦々(さんさん)と輝く紅葉とはまったく異なる、幻想的な紅葉は、また格別です。
ところで、お寺に来たのですから、やはり仏様のお参りを忘れてはいけませんね。永観堂のご本尊はちょっと変わったスタイルの仏様。後を振り返るお姿で彫られ、「みかえり阿弥陀像」と呼ばれています。
なぜ、このようなお姿で彫られたのか、詳しいお話は永観堂のホームページに掲載されていますので、ぜひ、ご覧になってください。
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■永観堂 禅林寺
ホームページ → http://www.eikando.or.jp/
みかえり阿弥陀さま → http://www.eikando.or.jp/mikaeriamida.html
次のページでは、「哲学の道」を歩きますが、その前にちょっと寄り道します。