日本株にも影響を与えたグレンコアショック、再来は?
日本株にも影響を与えたグレンコアショックの真相を探ります
同社は石油、石炭、銅、鉛、アルミ、鉄鉱石、農産物などの商品取引から輸送、保管まで手がけ、自らも多くの油田や鉱山権益を保有します。日本商社の資源部門をとてつもなく大きくしたようなイメージになると思います。2012年に同じスイスの資源大手エクストラータ社との合併を発表し、1年以上をかけて各国の承認(独占禁止法上)を得た後、2013年5月に620億ドルの買収額で合併を完了しました。
当面債務不履行などの問題は起こらない?
今回の騒動は9月下旬にグレンコアの社債が急落したことから始まります。そして保険の意味合いのあるクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)の価格は、同社のデフォルト(債務不履行)確率が50%以上あることを示しました。そして、そのタイミングで投資銀行のインベステックが、資源安がさらに続けば同社株の価値は殆ど無くなると指摘したことで、9月28日の株価と社債価格の暴落に繋がったわけです。では、グレンコアは本当に債務不履行を起こしそうなのでしょうか? グレンコアのネットの有利子負債額(債務残高より現金と即時現金化の可能な資産を引いた額)は300億ドル(3兆6,000億円)と巨額です。しかし、グレンコアは9月30日に、自身の健全性を強調する公告を発表しました。債務を2016年末までに3分の2に圧縮するよう、資産の売却策などを進めています。そしてプラスのキャッシュフローを維持しながら、流動性も確保しており、支払能力に問題は生じていないと述べています。長年に及ぶ金融機関との信頼関係を背景に、十分な融資枠も確保しているとの事です。
また10月16日には増資を完了し、16億ポンド(25億米ドル)を調達済みです。この資本増強と合わせ、無配政策と上述の資産売却策を進めれば、当面債務不履行などの問題は起こらないようにも思います。
当面破綻する可能性は低いが株が「買い」とは言い切れない
企業が破綻するとすれば、過度な負債を抱え、キャッシュフローもマイナスとなっている場合です。同社のネットの有利子負債額はここ3年、資本額の90~100%の範囲で、自己資本比率は30%前後で来ています。手元現金は短期借入金の57%という水準ですが、2年連続して良くなっています。2014年の営業キャッシュフローは純利益額の4.5倍あり、6年程度で有利子負債が完済できる金額水準でした。フリーキャッシュフロー(営業キャッシュフローから投資キャッシュフローを引いた値)も2014年が41億ドル、2013年が25億ドルとプラスが続きます。純利益ベースでも、過去5年で赤字は、小幅なものが一度あるのみです。
全体に負債額は多く、レバレッジの掛かっているバランスシート内容に違いありませんが、危機的な水準には遠く、一定の健全さを維持しているように見えます。もちろん、今後さらに資源価格が急激に下落すれば別ですが、現時点では急激に悪化している印象もなく、ここ2~3年変わらない水準です。これが危機的となるのであれば、日本の大手企業にはこれより遙かに深刻な状況となっている企業もあるといえます。
では、暴落した同社の株は買いかといえば、一概にそうとも言えません。株価は年初来で7割以上下がり、PER、PBRとも割安になっていますが、業績の下がっている時はこうなるものであり、割安だからと言ってすぐに買えるものでもないと思います。
グレンコアの場合は今後資源価格がV字回復するかどうかに掛かっています。資源価格についてはまだ数年以上低迷する可能性も否定できず、同社への投資は投機的な色合い強くなると思います。ただ、これほど株価が暴落するほど、現時点でのバランスシートやキャッシュフローは悪くないとも思います。
参考:グローバルリンクアドバイザーズの最新投資情報
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