基本的な治療費
もちろん実際にお口の状況を見てみなければ明確な金額は出せませんが、前歯の歯科インプラントの基本的な治療費はおよそ下記の内容となっております。1.精密診断料
レントゲン撮影、口腔内写真撮影以外に3DCTで撮影した3次元画像による事前精密診断により、顎の部分の骨量・骨質・危険個所(上顎洞や下歯槽神経など治療の際に触れたり傷つけたくない箇所)を確認し、手術のプランニングを行うことが主流となってきました。特に前歯の場合は骨が薄く吸収しやすいことも想定されますので、しっかりと事前に診断することが大切なのです。3DCT撮影&事前診断料としての全体の相場は奥歯の治療と同じくおよそ1万~5万円となります。
2.サージガイド製作費用
正確な位置に歯科インプラントを埋入する為の手術サポート器具であるサージガイド。最近は歯科業界の方だけではなく、一般の患者さんにも浸透してきているようです。手術のプランニング、カウンセリング時に患者さんから使用を依頼されることも今後ますます増えていくでしょう。単純な症例の場合は無料で製作する場合もありますが、特殊ケースの場合は費用が発生致します。相場はおよそ2万円~。インプラントを埋入する本数によっても金額は変動します。多くのインプラント埋入が必要な場合は10万円程度になる場合もあります。医院によっては1の精密診断料に含まれているところもあるようです。
3.インプラント手術費用
一見インプラントが入っていると分からないように上部構造まで装着することが必要。
4.アバットメントに掛かる費用
インプラントと上部構造を繋ぐ部分。前歯のインプラントの場合は、骨に裏打ちの無い歯肉だけの貫通部分(爪でいう甘皮のような部分)がとても目立ちます。歯肉が薄い為アバットメントが透けても審美性をキープできるように金属ではなく、歯冠色と同じ色のアバットメントにすることが望ましいです。白いジルコニアは強度も有り、金属に比べてプラークが付きにくい素材ですので前歯のインプラントの場合にはジルコニアを選択することが多いでしょう。奥歯の場合によく使用するチタン製アバットメントの場合は約2万円~5万円が相場ですが、先に述べたように上部構造を取り付ける際に下のアバットメントの色が透けることが無く、より審美性を保つことの出来るジルコニア製のアバットメントの場合は5万円~10万円になります。
5.上部構造(クラウン)製作費
前歯の場合も、インプラント埋入位置の限定や製作が複雑になりますが、長い目で考えて清掃性の高いスクリュー固定式のクラウンを作成することが望ましいと考えます。使用する素材は症例や医院によって様々ですが、歯根膜が無い歯科インプラントには緩衝が無いのでクラウン自体に強度が必要ですし、汚れの付着を抑え且つ審美性も保つため金属フレーム付合成樹脂やセラミックを選択しない医院も増えているかと思います。相場は約15万円~20万円程。現在国際的なスタンダードになっているのは審美性も強度もあるCAD/CAMで製作する2ケイ酸リチウム。ジルコニアをフレームに使用し表面を更に審美的に築盛することで強度と高い審美性を獲得することができます。
6.仮歯
歯科インプラントの上部構造が装着されるまでの仮歯はプラスチックで製作され1本5,000~10,000円です。最終的な上部構造と同じようにインプラントに負担させる為の慣らし運転用の仮歯は無料の医院も。仮歯の審美性を向上させたり、意図的に長期使用する場合は素材の変更等もあり1万~2万円となります。
以上が基本的な前歯の歯科インプラントの治療費となります。ベースは3+4+5の金額。この他、1の事前診断の際で骨量不足がみられ骨補填する必要が有ったり、歯肉の退縮で移植が必要になったり、通常の2次手術ではなく特殊な処置が必要な場合は別途費用が発生いたします。反対に、隣同士に2本以上のインプラントを同時に埋入する場合は割安で治療を行っている場合もあるようです。
前歯をインプラントにすることのメリット
前歯のインプラントは審美性を保つことが求められる。
価格も強度のあるオールセラミックブリッジが平均30万円~35万円と考えると、歯科インプラントの場合は約2、3割ほど費用が高くなりますが、清掃面などのメインテナンスのし易さや万が一クラウンが破折してしまった際の交換の容易さなど長い目で見て歯科インプラントを選択するメリットは果てしなく大きいと考えます。
いちばんよいのは天然歯を大切にお手入れする事
歯を失った際に歯科インプラントを選択することは多くのメリットを生むでしょう。しかし、いちばんは自分の天然歯をより多く残すために日頃からしっかりとお手入れをすることです。虫歯にならないようにしっかりと清掃し、定期的に歯科医院を訪れ自分では行き届いていない箇所までしっかりとクリーニングをしてもらうこと。予防を心がけることが大切です。それでも虫歯になってしまった場合や歯周病になってしまう場合もあるでしょう。そのような時にはマイクロスコープなどによる歯内療法や歯周病治療によって、安易に抜歯せずに保存をしてくれる歯科医院を訪れ、今以上に状況が悪くならないようにすることも大切です。痛くなってから訪れる前に、健康診断の一環として歯科医院に通ってみませんか?