男性の正規雇用、非正規雇用で格差が広がる
毎年、国税庁が発表している『民間給与実態統計調査』。この調査は年末12月31日現在の源泉徴収義務者のうち、民間の事業所に勤務している給与所得者が対象となっているため、経団連などの調査などより、実態に近い数値を見ることができます。昨年1年を通じて勤務した給与所得者は、4756万人で昨年から2.4%の増加。その内訳として、男性は2805万人(対前年1.9%増)、女性は1951万人(対前年3.1%増)。また、雇用形態別では、正規雇用が3104万人(対前年1.6%増)、非正規雇用(対前年4.9%増)という結果になっています。
景気回復傾向のなか、雇用の拡大はみられましたが、果たして給与はどうだったのでしょうか。
過去10年の平均給与の推移をみると、2012年以降、増加傾向に転じていますが、リーマンショックで急激に落ち込んで以来、10年前の水準には遠く及ばず、マイナス5.4%と決して楽観できる状況ではありません。
さらに、雇用形態別、男女別を最近3年間のデータでみてみると、男性は2012年から2.5%の伸び率を示していますが、女性は1.6%の伸び率にとどまっています。一方、正規雇用では2.2%の伸び率に対して非正規雇用では1.0%の伸び率にとどまっています。
ここで問題なのが、男性の非正規雇用です。男性の平均が2.5%増で、うち、正規雇用者の伸び率は2.3%でした。しかし非正規雇用者はマイナス1.6%です。今回の数値の中で、唯一マイナスの結果になったのが、男性の非正規雇用者の給与でした。2012年から2013年の昨年の調査では、非正規雇用者の伸びは男女ともマイナスでしたが、今回、女性はプラスに転じている一方、男性の非正規雇用者はさらにマイナスとなり、正規雇用との格差が広がった結果となりました。
インバウンドの増加は、いったい何だったのか?
業種別でも見て行きましょう。
昨今の外国人観光客の増加で、出張の際のホテルが確保できない、電化製品などの爆買いなどが話題となっていますが、関係業種の給与にまで反映されていない、というのが実態ではないでしょうか。
もともと非正規雇用が多いとされる観光やホテル、飲食サービス業は、前年より1.6%の増加ですが、もともとの平均給与が全体給与平均の57%というのが実態です。さらに、卸売り、小売りなどは前年からマイナス1.6%。外国人観光客の爆買いは、製造業を潤したものの、川下の現場では、その恩恵をあまり受けなかったと言えるのかもしれません。
年齢階層別の平均給与は、改善には程遠い
さて、もっとも気になる年齢別の平均給与です。
終身雇用の終わり、右肩上がりで収入が増える時代は終わったと言われて久しいですが、男性については、変わらず50~54歳で656万円とピークを迎え、60歳定年退職後に477万円とぐっと落ち込みますが、65歳~でも389万円の平均給与というのは、老後の生活資金としても十分な金額と言えるのではないでしょうか。さらに再雇用制度が開始され定年退職後も働くことが可能になり、今後も高年齢層の給与水準は保たれるのかもしれません。
女性に関しては、旧来から言われているとおり、30歳前後で平均約300万円。これが生涯続くわけです。結婚、子育てで退職、もしくは非正規雇用に転じると、その後、なかなか給与を増やすことができません。輝く女性の時代を実現するのは、至難の業と言わざるを得ません。