介護

介護を卒業した高齢者が介護の担い手となる仕組みとは

少子高齢化と高齢者の医療・介護を中心とした社会保障費の増大を背景に、要介護高齢者が介護の「卒業」を目指す取り組みに対し期待が高まっています。同時に、実際に介護を卒業した高齢者が、地域で開催される介護予防教室や要介護高齢者のリハビリ活動に「指導者」として参加することにより、さらなる健康増進や生きがい支援を促進させる仕組みづくりに関心が寄せられています。

執筆者:中山 奈保子

要介護となった後も続く「介護予防」

介護の卒業

要支援・要介護と認定された高齢者も、適切な運動や健康管理により介護に依存した生活から「卒業」できる可能性があります。

「介護予防」とは、健康な高齢者が介護を必要とする状態にならないようにするだけではなく、介護が必要になった場合にも、可能な限り自立した生活を送れるよう支援し、一人一人の生きがいや社会参加、自己実現を目指していくための様々な取り組みを指します。

介護を卒業した後の「居場所」と「役割」が自立生活を支える

公的な制度を使って介護を受ける人が少なくなれば、介護保険料の負担軽減はもちろんのこと、より手厚い介護を必要とする人へサービスが行き届くようになるなど、将来的に様々なメリットが生まれます。その一方で、介護を卒業した高齢者が、身体的・精神的・経済的な理由により再び要介護状態に陥るケースも少なくありません。そのため、介護を卒業した後も継続して高齢者の暮らしを支える仕組みが重要となります。

病気や障害を乗り越えた体験を活かしたボランティア活動

介護の卒業

自宅に閉じこもることなく、仲間を一緒に過ごす時間を持つことが自立生活を維持していく上で大変重要となります。

介護を卒業した高齢者が自宅に閉じこもることなく、家族以外の仲間と有意義な時間を過ごす「きっかけ」や「場所」を持つことは、心身の健康管理と同様、再び要介護状態にならないために欠かせない要素となります。なかでもボランティア活動は、高齢者が社会との接点を得ながら「役割感」や「いきがい感」を取り戻す場のひとつと言われています。

そこで全国的な広がりを見せているのが、介護を卒業した高齢者が、要介護高齢者のリハビリを支援する取り組みです。在宅療養を送る要介護高齢者が参加する運動教室に「ボランティア指導員」として出向き、自らの体験と知識を活かした支援を行うといった事例が続々と報告されています。

「伝える」ことによる様々な健康効果

元・要介護高齢者としての立場を活かしたボランティア活動では、自らの体験を通して得られた知識を他者に伝えることにより、様々な健康効果が得られます。例えば、自分が以前行っていた体操を指導する場面では、どんなことが大変だったか、その体操がどんな場面に役だったのかを振り返りながら伝えることができます。そこで「良くなった自分」を再認識できれば、自らの動きや体調を見直すだけではなく、生きる意欲や新たな夢や希望を持つことに繋がって行きます。

ボランティア活動をきっかけに、指導者としてさらに社会に貢献しようと、有資格者が開催する専門講座で健康に関する知識を学び、指導のバリエーションを深めようと意気込む人も増えているのではないでしょうか。

介護の卒業

病気や障害の体験を語り合うことを通し、心身ともに様々な効果が得られます。

実際に病気や障害を乗り越えた人の指導や声援は、知識豊富な専門職の関わり以上に、リハビリに取り組む要介護高齢者の心に響くものがあります。年齢が近かったり、ご近所同士であればなおさら親近感が湧き、「自分も介護を卒業できるかもしれない」などといった気持ちを引き出す作用も強いように見受けられます。

最近では、高齢者が介護の担い手として活躍できるよう、独自のボランティア育成講座を開催する自治体も徐々に増えているようです。

若い世代だけで高齢者の暮らしを支える仕組みの限界

介護の分野に限らず、高齢者が高齢者同士で暮らしを支える仕組みづくりは、今後さらに必要不可欠な存在となっていくでしょう。働き盛りの若い夫婦が介護が必要になった親を支えるために仕事や育児に支障をきたしてしまったり、家計を圧迫するなどのケースが問題視されるなか、若い世代だけで高齢者の暮らしを支えるのではなく、高齢者が積極的に社会に貢献できるよう応援していかなければなりません。

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