180スポーツは“悩める子羊”救済グレード
緊急ブレーキ機能(CPAプラス)や、運転手の疲労や眠気を検知して注意を促すアテンションアシストを標準装備。ブラインドスポットアシストなどを備えた安全運転支援システム、レーダーセーフティパッケージも設定されている
試乗車は180スポーツだった。最も売れ線のグレードではないだろうか。1200回転から350Nmを発揮、というトルクフルな走りを想像すれば、誰しも本当は250が欲しいところだけれども、せっかくならちょっと派手なスタイルで乗りたいし、かといってシュポルト4マチックでは過剰でお値段も張るし、なんて悩める子羊を救済するグレードである。
確かに、ここ一番の加速など、180の走りにはちょっとした我慢が必要だ。小気味よく変速を促し、力不足をなるたけ感じさせないようプログラミングされている熟成の進んだ7速DCTをもってしても、かったるさは否めない。そりゃ、全域で余裕の250エンジンを選ぶにこしたことはない。
この際、見映えの派手さを回避して、受注生産のノーマル250を選んでじっくり待つ、という手もある。懐と心と時間すべてに余裕のあるツウにはオススメしたいところだが、近頃ではメルセデスであっても旬が大事(特にMFAモデルはそうだ!)で、できるだけ早く乗りたいという向きには、やはり180スポーツを奨める他ないだろう。
標準グレードの17インチに比べて、アシはそのままに18インチに履き替えた180スポーツで、動力性能以外に気になる点はというと、ダイレクトステアリングを採用しているためだろうが、アシのさばきが妙にニンブルだったこと。もう少し、しっとりとした、けれどもスポーティな味付けにして欲しいところ。もっとも、そうすればそうしたで、メリハリがないと文句のひとつも出るかも知れないが。
メルセデスをファッション(=流行)で乗る。そういう人も増えてきたことだろう。このクラスでは、従来とは異なるノンポリ・ノンロイヤリティユーザーが増えて当然だし、それこそ、そうした層を新たに獲得するためにメルセデスはMFAを活用するこのクラスに打ってでた。
それゆえ、ツウにこそおすすめしたいスタンダードアシにスタンダードタイヤ、スタンダードフェイス、といった“ドノーマル”グレードが敬遠されがちとなり、見映えだけ派手なベンツが街に増えている。飽きられた暁として、未来の中古車市場においては“乗り心地の悪い”ベンツがお安く並んでしまう。それを、初めてガイシャ、初めてベンツとして将来買って乗るユーザーは、いったい何を感じ、何を思うのだろうか。興味深い。