高級車に課された“性能と効率の両立”

M・ベンツCLS63AMG

昨年11月に開催されたロサンゼルスモーターショーで初披露された、2代目となる4ドアクーペCLSのハイパフォーマンスモデル。AMGが新開発した5.5リッター直噴ツインターボエンジンに7速スピードシフトを組み合わせる。サイズは全長4996×全幅1881×全高1406mm

高級モデルの“エコ”化が、ハイパフォーマンス分野にも及んできた。フェラーリやポルシェがハイブリッドモデルを出すという時代だから、それも当然か。高級/高性能車は、言ってみればハイテクノロジーの見本市のようなもの。エコ化を消極的なスタンスと捉えず、社会的に必須であり、技術的チャレンジの結果ともみる。そういうカスタマーも今後、ますます増えてくることだろう。

ただ、高級セグメントにおいては、エコ対策の成果よりも、さらなる高性能化をアピールしなければならないというジレンマもまだある。走らないフェラーリは要らない、は極論だとしても、ユーザーは、たとえばフルモデルチェンジにあたって、性能のわずかな縮小を許すほどにはまだ成熟しきれていない。

一定のエコ化以上に、パフォーマンスの向上を訴える必要も残っているのだ。そこには地球環境保護に対して自動車そのものがもつ究極的なジレンマが顔をのぞかせているわけだが、それはともかくとして、右手に花束/左手にピストルといった“二重人格”を、もうしばらくは性能と効率の両立を技術的なチャレンジで克服したとして、積極的に謳っていかなければならない。

今、高級車に限らずその手段としてもてはやされているのが、直噴化して過給したダウンサイジング・エンジンと、効率的な多段ミッションをペアで採用する方法だ。VW・アウディがその先鞭を付けたが、メルセデスやBMWも追従の姿勢をみせている。好対照にあるのが、ハイブリッド化を推し進める日本のレクサスということになろうか。
M・ベンツCLS63AMG

AMGパフォーマンスパッケージは過給圧を1.0から1.3へアップ、カーボン製エンジンカバーなどを備える

最新世代のプラットフォームに最新のパワートレインを積み込んだ 新型CLS63AMGは、高性能車の最新トレンドを理解するうえで重要なモデルである。注目のパワートレインは、直噴5.5リッターV8ツインターボエンジン(M157)+ アイドリングストップ機構付きAMGスピードシフト7速MCT(マルチプレートクラッチテクノロジー)。518ps/700Nmと、標準仕様でも相当に過激なパワースペックを誇るが、過給圧を0.3上げて+32ps/100Nmの550ps/800Nmを達成したパフォーマンスパッケージ(以下PP)も用意されている。

この新型CLS63AMG PPと自然吸気6.2リッター(M156)エンジンを積む旧型CLS63とを比べれば、+36psのパワーアップを果たしながらも、燃費は32%も向上しているというのがAMGメルセデスの主張で、なるほどそれならパフォーマンス重視のユーザーから不満の声も上がりそうにない。ちなみに、CO2排出量を2012年までに3割減らすというのがAMGメルセデスの公約だ。

来年以降は(ひょっとして)違うのかも知れないが、今年は全くもって“わざわざ見に行く”価値のなかったデトロイトショー。ここでも主題はやはり“効率と性能の両立”であったが、そんなヒートテックが必要な極寒の地から、陽光のもとならばTシャツでも過ごせそうなサンディエゴに場所を移しての、新型CLS63AMGのテストドライブとなった。