我が国最古の神社、大神神社
さて、いよいよ山の辺の道の大きな見所である大神神社に到着します。大神神社は、その創建にまつわる伝承が『古事記』や『日本書紀』にも登場する、我が国最古の神社のひとつです。古来より大神神社には神様をおまつりする本殿はありません。というのは、ご祭神である大物主大神(おおものぬしのおおかみ)が、神社の背後にそびえる三輪山に鎮まっているため、三輪山そのものをご神体として参拝するからです。
三輪山へは、近年まで入山することが許されていませんでしたが、現在は、大神神社のすぐ北側に隣接する大神神社の摂社である狭井(さい)神社で許可を得れば、入山することができるようになりました。
大神神社境内には、たくさんの酒樽がありますが、これは、ご祭神が醸造の神であるとともに、酒造りは三輪の地からはじまったとされるためです。今なお全国の醸造業者からの信仰も厚く、毎年、11月14日には「醸造安全祈願祭(別名「酒まつり」)が催され、境内では全国銘酒展や振る舞い酒も行われます。
大神神社の周辺には、名物の「三輪そうめん」の店があるので、ここらへんで腹ごしらえをしておきましょう。冬は、温かいにゅうめんをいただけます。
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■大神神社
ホームページ → http://oomiwa.or.jp/
三輪山登拝について → http://oomiwa.or.jp/about/miwayama/tohai/
古代の大和人の世界観に想いを馳(は)せながら
三輪山から下山したら、ふたたび山の辺の道に戻りましょう。しばらくは木立の中を上り下りする道が続き、その後は、玄賓庵(げんぴんあん)や大神神社の摂社である檜原(ひばら)神社など、古代の記憶を今に伝えるような寺社が点在する長閑な道を歩いて行きます。檜原神社の辺りからは西の彼方に、雄岳と雌岳の2つの山頂のある二上山(にじょうざん)を望むことができ、夕暮れ時は、二上山の方角に夕日が沈んでいきます。
古代の大和人の世界観では、東の三輪山は太陽が生まれる場所。一方、夕日が沈む西の二上山の向こうは死者たちの支配する「黄泉の国」が広がっていると考えられていました。
檜原神社の先には、景行天皇陵、崇神天皇陵という2つの天皇陵があります。景行天皇は、神話時代の第12代の天皇。全国を遠征して歩いた説話が残る日本武尊(やまとたけるのみこと)の父にあたる人物です。
知らなければ、そのまま通り過ぎてしまいそうな、道沿いのこんもりとした森が古代の天皇の陵(みささぎ)であるというのが、古代史ロマンの道ならではですね。
さらに少し歩くと、長岳寺に到着。ここで、今回歩くコースの全行程のおよそ半分まで来たことになります。お寺の門前にはトレイルセンターもあるので、少し休憩してから後半を歩きましょう。
次のページでは、山の辺の道の醍醐味ともいえる素朴で、どこか懐かしい風景の中を歩いて行きます。