F1/F1(フォーミュラ1)について

ホンダF1はいつだってドン底からのスタートだった。(2ページ目)

マクラーレン・ホンダ復活で期待が高まる中、苦戦を強いられる2015年シーズン。しかし、ホンダのF1挑戦の歴史を振り返れば、最初は苦難の連続だった。その歴史を振り返ります。

辻野 ヒロシ

執筆者:辻野 ヒロシ

モータースポーツガイド

予選最下位から始まったホンダF1

F1への出場を表明してから2年後の1964年、ホンダがいよいよF1に初登場します。63年から軽自動車の生産を始めたばかりですから、ヨチヨチ歩きの赤ん坊のような4輪メーカーが世界最高峰に挑もうとしていました。

しかし、いきなり苦難が訪れます。当初、英国のチーム「ロータス」が車体を作り、ホンダが1500ccのエンジンを作るというエンジン供給の参戦が計画されていました。4輪車をまだ作ったことがないメーカーですから、餅は餅屋に任せてF1挑戦という計画だったわけです。しかし、参戦した1964年の年明けすぐに「ロータス」は一方的にこの関係を解消。ホンダがF1に参戦するためには車体も自分たちで作らなければならなくなりました。

この当時、日本にフォーミュラカーを製造する会社などありません。外国製のフォーミュラカーを参考に、見よう見まねで作り上げた車体に、わずか1500ccなのに12気筒もある巨大なエンジンを(バイクの発想からか、F1の常識では考えられない)横置きのレイアウトで載せて完成したのが初代F1マシン「ホンダRA271」です。

RA271

ホンダRA271 (1964年)


当時のF1世界選手権は今のようにシーズン全戦に参戦する義務はなく、ホンダはシーズン途中の第6戦ドイツGPから参戦しました。「ロータス」に提携を断られてわずか半年で、ホンダオリジナルのF1マシンは出走しました。ニュルブルリンク北コース(約22.8km)で行われた予選のタイムはトップから約1分遅れの9分34秒で、予選最下位。トップのタイムから107%以内が予選を通過できる「107%ルール」が当時も存在したと仮定すると9分14秒6になり、予選すら通過できないタイムだったのです。

なんだか今年の「マクラーレン・ホンダ」も開幕戦は似たような状況でしたね。64年ドイツGPの決勝レースは最後尾スタートとなります。13位完走扱いとはなったものの、結局、問題を抱えたままのホンダF1は3戦に出場して全戦ゴールできないままだったのです。それが1960年代の第1期F1活動の始まりでした。

栄光の第2期も苦しいスタートだった

60年代の第1期F1活動で2勝をあげたホンダは、市販エンジンの環境対策に集中するため1968年をもっていったんF1から撤退します。が、70年代のオイルショックの影響も少なくなり、会社の業績も伸びる中で、F1への復帰を模索しはじめます。

まず手始めに1980年からF1の一つ下のF2にエンジン供給を開始。チャンピオンとなり、1983年からはホンダが出資したF2チーム「スピリット」と共にF1に復帰します。F2のエンジンは2000ccのNA(自然吸気)エンジン。F1は当時主流になりつつあった1500ccターボエンジンでした。

スピリット・ホンダ

スピリット・ホンダ(1983年)


600馬力を超えるパワー勝負のターボエンジン時代。F2の車体を使用する「スピリット・ホンダ」は大苦戦。シーズン途中から参戦し、6戦中完走はわずか3戦(最高位7位)という成績でした。トラブル多発のエンジンに、ドライバーだったステファン・ヨハンソンも当時を懐古するインタビューで相当苦労したことを語っています。

下準備もなく始まった第1期活動に比べると、第2期は4輪メーカーとして成熟し、F2でレーシングエンジンの実績も積んでの参戦でしたが、またもや出だしは苦戦したのです。ただ、その後、パワー勝負のF1ターボ時代をリードし、翌年からは「ウィリアムズ」と組み優勝。「勝つためにはホンダターボエンジンが必要」と各チームが求める状況が生まれ、「ロータス」さらに「マクラーレン」と組むようになり、88年には1シーズン16戦15勝の最強エンジンになっていきます。それでもあの栄華の時代を迎えるまで、苦労した初年度から5年の月日が必要でした。

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