アナログな部分は極端に少なくなったが
なんだか「デジタル」で決められていくF1は受け入れられないという人もいらっしゃるかもしれませんね。今は無線でドライバーに「ここから数周はタイヤを労わるように」など、戦略面の分析から様々な指示が出されるシーンをよく目にします。ドライバーはチームが解析したマシンの状況をもとに戦略を命ぜられ、それをミスなく遂行しなければならないのです。うーん、場合によってはラジコンのように見えてしまうかもしれませんね。そのため、ファンを興ざめさせてしまうような展開にならないように無線の交信を制限することも幾度となく議論されています。ただ、これは安全上の懸念からすぐやろうということにはなりません。
人が判断して、人の実力差がハッキリと出るアナログ時代を懐かしむ人にとっては寂しい状況に映ります。しかしながら、この流れはどうやっても止めようがありません。今はスマホ一つで遠隔操作の録画予約やチケット購入、銀行の振込など何でもできる時代です。それと同じで、F1でもこういったデジタルデータの恩恵を完全に排除するのは難しい現状。だったら、その中で差の出る部分を楽しみたいものです。
2014年王者のルイス・ハミルトン【写真:PIRELLI】
いくらコンピューターの恩恵でレースが成り立っているとはいえ、一つひとつのアクションを行っていくのは人間の力です。自動運転ではないのだから、一発の集中力で好タイムを叩き出し、瞬時の判断でバトルに勝ち抜いていくのは最終的にはやはりドライバーの力。
今は精巧なドライブシミュレーターの恩恵で、ある程度の実力を持ったドライバーならF1で決勝を走りきることは可能だと言われており、実力以上にスポンサーマネーが決め手となってレギュラードライバーの座を獲得する選手も出てきています。しかし、フェラーリ、レッドブル、メルセデス、ウィリアムズといったトップチームがそういったドライバーを起用することは稀ですし、上位争いを展開するのはやはり実力が買われているドライバーたちであることは変わりません。
地上波の放送が無い。今後のF1は?
かつてはフジテレビが全戦、地上波で放送していた「F1グランプリ」のテレビ中継。今年の地上波の放送は年数回のダイジェスト放送のみで(第2回放送は9月13日にオンエア)、BSフジでレースの放送が行われるほか、フジテレビNEXTなどの有料放送で全セッション生中継の放送が行われています。今は無料放送でお茶の間にF1が登場することは稀になりました。F1イギリスGP 【写真:PIRELLI】
F1というレースサーカスは、レースを開催するサーキットが支払う「開催権料」と各国のテレビ局が放送するための「放映権料」を商売の軸としています。90年代から2000年代にかけてF1はグローバル化を推し進め、これまでF1に縁がなかった新興国でもF1の中継が行われたり、グランプリが開催されるようになりました。
オリンピックやサッカーのワールドカップは4年に1度の開催で、開催権の獲得が難しいですが、全20戦程度開催されるF1はそれに比べるとハードルは低いため多くの国々が飛びつき、開催権料も放映権料も釣り上りました。
F1の放送は基本的に「無料放送」で行われることが軸になっており、各局はそれに付帯するCS放送などの有料放送を行って収入を得ています。無料放送の地上波では基本的にスポンサーの広告料をとって放送の予算を立てるシステムですが、今の時代は他のスポーツと同様にスポンサー獲得が難しいのが現状。これは日本に限らずで、多くのF1チームが本拠地としているスポーツエンターテイメント大国イギリスですら、国営放送BBCが生中継を全戦実施できなくなっているくらいです。
今の時代はインターネットのオンデマンド放送や情報配信が盛んですが、実はF1は今もSNSを使った配信には積極的ではありません。テレビ中継を軸とした長年のビジネスモデルを頑なに貫き通しています。これは動いている額が莫大すぎることと同時に、F1の最高峰としてのプライドでしょう。
ただ、それゆえにF1の人気は世界的に低迷していると言えます。今季も昨年に続いて「メルセデス」の圧倒的な独走劇となっており、海外から配信されてくるニュースもどこかトーンが低い感は否めません。しかしながら、F1は今も4輪モータースポーツの最高峰であることは変わりません。
今はまさに新時代に向けた過渡期にあるのではないかと思います。今後のレギュレーション変更も盛んに議論されていますし、エンターテイメント性あふれるレースへの変貌も期待されています。
日本国内においては、やはりホンダが上昇気流に乗ること。そして、小林可夢偉、佐藤琢磨、鈴木亜久里などの表彰台経験を持つ歴代ドライバー以上の日本人ドライバーの登場が人気復活への大きな鍵となるでしょう。
F1日本グランプリ公式サイト(鈴鹿サーキット)