F1/F1(フォーミュラ1)について

ホンダ凱旋のF1「今と昔のF1は何が違う?」(2ページ目)

2015年、ホンダがマクラーレンとタッグを組んでF1に参戦。80年代から90年代に栄華を極めた名コンビ「マクラーレン・ホンダ」の復活に、久しぶりにF1の話題に目を向けるようになった方も多いようですが、当時と比べてF1は大きく変わっています。ホンダの凱旋レースとなるF1日本グランプリを前に、かつてのF1と今のF1の大きな違いを解説します。

辻野 ヒロシ

執筆者:辻野 ヒロシ

モータースポーツガイド

F1のエンジン音は静かになったけど

新規定になった2014年、メルセデスベンツ、ルノー、フェラーリの3メーカーがハイブリッドのパワーユニットを供給するメーカーとして参戦しました。そして、2015年からはホンダがこれに加わっています。

パワーユニット

メルセデスのPU 【写真:Daimler】


メーカーにとって難しい課題は「ハイブリッド」の燃費との戦いです。2014年からはそれ以前のエンジン時代の2/3の燃料消費だけで決勝レースを走らなくてはならなくなりました。これすなわち、ERSでモーターを回して駆動に変えるエネルギーがオマケ程度ではいけないということですね。ガソリンだけではなく、電気の力もたくさん使って燃費を向上させなくてはならないわけです。

そこで肝となってきたのが、「熱エネルギー回生システム」です。ターボエンジンが発生する非常に大きな排気の熱を吸収して、モーターを回すパワーにしなくてはならない。その吸収(回収)の力が甚大であるため、排気の音まで吸収してしまうのです。これがF1のエンジン音が小さくなった大きな要因です。市販車のハイブリッドカーは静かなイメージがあり、それはモーターで走っている時間のイメージだったりしますが、それとはちょっと違う理由で静かになってしまいました。ただ、今季は音質が少し改善しています。

エンジンパワーだけじゃ勝てない時代

ホンダが勝利を重ねた1980年代のF1はターボエンジンの全盛期。そして、自然吸気エンジン規定に変わった89年以降もホンダは勝利を重ねていったことは当時のF1ファンなら覚えているでしょう。

当時はレースで勝利するために強力なエンジンのパワーが絶対的に必要でした。現在もそれは変わりないのですが、エンジンが強ければ何とかなる時代は90年代の前半に完全に終わりを告げました。車体の開発技術が飛躍的に向上し、エンジンの力と運動性能に優れた車体のトータルバランスがレースの勝敗を決める時代になっていきます。コンピューターによる演算スピード、解析能力の進歩によって、車体の性能が鍵を握る範囲はどんどん大きくなっていきます。レースはアナログの時代からデジタルの時代へと変化を遂げたわけです。

その流れに追い打ちをかけたのが2000年代に起こった「メーカーワークスチーム戦争」の時代です。フェラーリ、ルノー、メルセデス、フォード(ジャガー)、BMW、ホンダ、トヨタという世界中の巨大自動車メーカーがそれぞれにワークスチームを持ち、そこに莫大な資金が流入したことで、F1チームの規模は80年代や90年代では考えられないくらいに巨大化しました。

ベルギー

2015年ベルギーGP   【写真:PIRELLI】


単にクルマを設計するに留まらず、ありとあらゆる状況を想定してシミュレーションを行い、そのデータを解析して最新のパーツを設計したり、レースの戦略を決めていく。そして、マシンからテレメトリーと呼ばれるデータ通信を使いリアルタイムで吸い上げられたデータが、チームの本拠地に送られ、瞬時にコンピューターを使って解析され、戦略の変更を指示する。つまりは目の前で起こっていることをサーキットの現場の人間が見て、考えて、判断していては手遅れになる。それくらいデジタル化してしまっているのが、今のF1です。

では、アナログな部分はもうF1には残っていないのでしょうか?

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