セットプレーを有効活用せよ
サッカーの得点パターンは、大きく分けて4つに大別される。カウンターアタック、セットプレー、自分たちが得意とする攻撃パターン、ミスやアクシデント(反則によるPK)など、の4つである。
“速攻”とも呼ばれるカウンターアタックを仕掛けるには、相手の背後を素早く突くことが前提だ。しかし、シンガポールとカンボジアがそうだったように、W杯予選で対戦する相手は自陣に押し止まる。背後を突こうにも、スペースがないのだ。
日本が得意とするパスワークによる崩しも、スペースを埋められた状況では難しい。ゴールから遠いところで、パスをつなぐだけになってしまう。4つの得点パターンのうちふたつが、W杯予選では成立しにくいのだ。
ここで重要なのがセットプレーである。コーナーキック(CK)とフリーキック(FK)だ。
前回予選でもCKが得点パターンのひとつに
前回のブラジルW杯アジア予選でも、対戦相手は守備を固めてきた。日本にとってのアウェイゲームでも、ディフェンスに軸足を置くチームばかりだった。ゴール前を固める相手を崩す手立てとして、日本はセットプレーを有効活用した。2012年6月のヨルダン戦では、右CKから先制点をマークした。6対0の大勝を締めくくる一撃も、ショートコーナーからのヘディングシュートだった。
同年9月のイラク戦では、スローイングを起点にゴールを奪った。アルベルト・ザッケローニ監督が就任当初から仕込んできたスローイングのパターンが、勝点3を呼び込んだ。これもまた、セットプレーの有効活用と言える。
シンガポール戦の日本は、14本のCKを獲得した。しかし、CKは得点には結びつかなかった。3ゴールを記録したカンボジア戦でも、12本のCKからゴールは生まれていない。
FKも少ない。ゴールを直接狙える位置からのFKは、シンガポール戦もカンボジア戦もなかった。直接フリーキックをそのまま決めたゴールは、実は2年以上も記録されていないのである。
10月、11月のW杯予選も、9月の連戦と同じように十分な準備期間が無いままに臨むこととなる。それだけに、セットプレーの価値を見直すべきではないだろうか。限られた時間のなかでも、CKやFKのパターンは磨き上げることができる。前号で指摘した長身選手の必要性も、セットプレーを有効活用する手助けとなる。
華麗なパスワークによる美しいゴールも、CKやFKからのゴールも、1点に変わりはない。どんな形からでも得点を奪えるようにしていくことが、W杯予選突破はもちろん世界を意識した戦略となっていく。セットプレーからの得点で勝利するチームも、間違いなく強いのだ。