まだまだある、オリジナリティに富んだ「アヴランシュ・ゲネー」の生菓子
前のページでは、「アヴランシュ・ゲネー」の生菓子の中でも、特にスペシャリテと言うべき品をご紹介しました。しっかり焼き込んだタルトなど、茶色系のお菓子が得意な印象のある上霜シェフですが、もちろん、華やかな色彩のお菓子も並んでいて、それらにも独自の工夫とこだわりがあります。
「ヴィオレ」は、すみれの花が香るババロアと、すみれとフランボワーズを合わせたジュレを重ねたもの。フランスではよく、すみれとカシスを合わせることがありますが、上霜シェフは、カシスだと強すぎるため、よりやさしい印象のフランボワーズを選んだそうです。ダックワーズ生地を土台と間の二層に入れ、軽すぎずしっかりとした食べ応えを出しています。
ピンク色が可愛らしいベリー類のムースですが、これも、ムースだけのお菓子では軽すぎるため、アーモンドクリームとベリー類を焼き込んだタルトを土台として埋め込んでいるのが、上霜シェフらしいこだわりです。また、フォークを入れると、ごくゆるやかな赤いフルーツ類のソースが流れ出すのも、デザートのような出来たて感があり、魅力的です。
「ポワリネ」は、名前のとおり、「ポワール=洋梨」と、アーモンドの「プラリネ」を組み合わせたもの。このお菓子には、上霜シェフと8年間共に働いたというスタッフの方との絆が秘められています。
当時、自家製プラリネを初めて作り、これを使ったお菓子を考案した上霜シェフ。アーモンド入りのジョコンド生地にコーヒーのシロップをしみ込ませ、プラリネクリームと重ね、フランスの伝統菓子の一つと言える「オペラ」と「マルジョレーヌ」の要素を合わせたようなものだったそう。これに、そのスタッフの方が、キャラメル風味のコーヒーに漬け込んだ洋梨を入れてさらにアレンジしたのが、このお菓子の誕生のきっかけだと言います。今回のオープンにあたって、その方にも了解を取り、二人の合作とも言うべきこのお菓子を並べることにしたのだそうです。
これまでにも何種類かのサバランを作っていらした上霜シェフですが、その中でもコーヒー味は特にお気に入りだそう。チョコレート味のサバラン生地に、ラム酒の利いたコーヒーシロップがたっぷりしみ込んだ力強い味わいは、男性にもお勧めしたい品。
上には、チョコレートガナッシュをホイップしたなめらかで軽いクリームがのせられています。
「フォルティシマ」は、小麦粉を使わず、卵白をほとんど泡立てずに入れることで、ごくしっとりとした口どけに焼き上げた2種のチョコレート入りビスキュイと、ガナッシュを重ねただけの、ごくシンプルで濃厚なチョコレートケーキ。
ガナッシュに使用しているチョコレートは、フランスの「プラリュ」というプロが好むブランドの「フォルティシマ」という同じ名前のカカオ分80%クーベルチュールを使用。生地にはラム酒が効いたシロップをしみ込ませてあり、ガツンとインパクトのある味わい。チョコレート好きの方が満足すること間違いなしです。
最新作の一つとして登場する「シャルロット パンデピス」は、通常、洋梨や苺などフルーツのババロアやムースを生地でぐるりと囲むことの多い「シャルロット」に、ブルゴーニュ地方やアルザス地方の伝統菓子として知られる「パンデピス」味を採り入れ、クラシックなフランス菓子をベースにオリジナルアレンジを加えた、上霜シェフらしい一品です。
次のページでは、手土産にぴったりの焼き菓子達をご紹介します。上霜シェフならではのオリジナル品に注目!そして、実は店内に隠された、師弟の絆のエピソードもご紹介します。