脳・神経の病気

聴神経腫瘍の症状・診断・治療

聴神経腫瘍は良性の脳腫瘍の一つで、小脳橋角部という場所に発生します。比較的若年の方にみられ、男女差はありません。治療は経過観察、開頭手術、放射線治療です。腫瘍の大きさで予後が大きく変わりますので早期発見、早期治療が大切です。

井上 義治

執筆者:井上 義治

形成外科医 / 皮膚・爪・髪の病気ガイド

聴神経腫瘍とは

聴神経腫瘍(ちょうしんけいしゅよう)は、脳腫瘍の一種で耳の奧の小脳橋角部(しょうのうきょうかくぶ)という部位に発生し、神経鞘腫(しんけいしょうしゅ)とよばれる組織の良性腫瘍です。

聴神経

聴神経腫瘍は小脳と橋の間に発生し蝸牛神経、前庭神経の神経周辺の細胞から発生します。


発生する場所のすぐ近くに三叉神経、顔面神経があり、どちらの神経も障害されることがあります。

聴神経腫瘍の年齢、性差

比較的若年の20歳から60歳ぐらいに多く発生し、男女の比率は同じです。年間100万人に17人発生したという報告があり、比較的希な腫瘍です。

聴神経腫瘍の症状

初発症状としては片側の聴力の低下が大部分です。次に耳鳴り・平衡感覚の低下・めまいなどが発生します。さらに進行すると頭痛・顔面痛・顔の筋肉麻痺などの症状が発生します。

聴神経腫瘍の診断

■MRI
脳腫瘍の診断にはMRIが必要です。

MRI

脳MRI画像。小脳橋角部に発生した聴神経腫瘍。


■病理
最終的な診断は、切除した腫瘍組織の病理診断(顕微鏡診断)で決定します。

シュワン細胞

聴神経腫瘍はシュワン細胞という神経周辺にある細胞が増殖した良性腫瘍です。


聴神経腫瘍は良性腫瘍です。腫瘍の増大も年に数ミリといわれています。しかし発生する部位が小脳橋角部という場所で、増大しすぎると延髄を圧迫し、最終的に死亡する可能性があります。

聴神経腫瘍の治療法

■経過観察
小さな聴神経腫瘍は、腫瘍自体は良性ですので、年に1、2回のMRI撮影を続けながら、経過観察を行います。

■開頭手術
ある程度の大きさの聴神経腫瘍では、増大すると生命予後に関わるため手術を検討します。開頭手術で聴神経腫瘍を切除し、完全に腫瘍細胞を取り除くことができれば治癒となります。腫瘍が残存しても良性腫瘍ですので、慎重に経過観察を行います。

手術の合併症として、聴覚の喪失・平衡感覚の喪失・顔面神経麻痺・三叉神経麻痺などがあります。

■放射線治療
聴神経腫瘍に対して、いろいろな種類の放射線治療があります。ガンマナイフ、サイバーナイフなどの治療があります。放射線治療の利点は、手術が必要ないこと。通院で治療が可能な場合もあることです。

不利な点は、時として腫瘍の増大を抑えきれないこと。三叉神経麻痺を合併する可能性があること。2次発がんの可能性があることです。

聴神経腫瘍の予後

聴神経腫瘍の予後は、その大きさで大きく異なります。小さなものでは予後良好です。大きなもの、両側発生したものでは予後不良です。いずれにしても早期発見、早期治療が大切な疾患の一つです。

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