2.「訪問者の楽しみを制限しない」
二つめが訪問者の楽しみを制限しないこと。旅というと仲間と同一行動することが多いが、マカオの場合は別行動でも違和感はない。ジャンルの異なる様々な楽しみ方があるため、趣味の違う同士で訪れ、それぞれ個別に楽しむことが可能なのだ。
リゾートを満喫するもよし、世界遺産を見て回るもよし、グルメ三昧するもよし、エンターテインメントをハシゴするもよし。
むしろマカオでは、人それぞれが好きな楽しみ方を選んだほうがいい。なぜなら、どれもみな特徴的で一流のため、それぞれが最も楽しみたいことに打ち込まなければもったいないからである。
(下記:どんな目的で来てもそれぞれ対応できる多様な楽しみ)
治安の良さ
こんなマカオには、女性だけで訪れ、現地で別行動するケースも増えているが、それが可能なのは「治安」がいいからである。日本を基準にすると、諸外国でそれより治安のよい国を探すのは困難であるが、現在のマカオは徹底した観光立国化の中で日本に負けない治安を保っている。
3.「場所的トラベルだけでなく『タイムトラベル』もさせる」
マカオを歩くと、カメラに収めたい場所が次々と現れるため、フォトジェニックな街と言われる。もちろん世界遺産はその代表だが、実はそれ以外にマカオの最大の魅力と呼ばれるものがある。昔のまま残っている古い街並み、つまり下町である。
これこそ、マカオの魅力を最大限に高める「タイムトラベル」の舞台となる。
開発めざましいマカオだが、地元の人々の生活圏には古い下町がそのまま残され、パラレルワールドを形成している。
しかも博物館的に残されているのではなく、地元の人々の生活が当時のまま生き生きと営まれている。だからこそ、訪れた人がその時代にリアルにタイムスリップしてしまうというわけだ。
そうした町は一度失えば二度と取り戻すことはできない。新しく開発すべきものは開発するが、守り抜くべきものは頑固なまでに守り、保全し、生かし続ける。それにより、マカオ独特のタイムトラベルを可能にしているのだ。
マカオという「モザイクな街」
観光立国というと、あたかも国家主導で一つの方針の下に統一された計画で進められるようなイメージがあるが、マカオを見るとそれが必ずしも正しいとは言えないことがわかる。一つの国に、古きヨーロッパと新旧のアジア、そして現代のアメリカが共存し、世界遺産、古い街並み、グルメ、エンターテインメント、カジノと、どんな嗜好も否定されず、あるがままに混在している。
それら一つ一つは、間近で見れば互いに異質であるが、一歩引いた視点から見ると、全体として調和が取れた「モザイク絵画」のようになっている。
つまり時間も文化も無理に統一せず、共存を許し、混在させていることが、マカオの複雑で重層的な魅力を生んでいるのである。