昔を語る満徳寺資料館
復元された本堂の西側にあるのが、1992年にオープンした「縁切寺満徳寺資料館」です。落ち着いた和風な造りで、江戸時代の縁切り文化を伝える貴重な資料などが展示されています。展示室に向かう前に映像コーナーがあり、まず “縁切り” についてわかりやすくまとめたアニメーションビデオを見ることができます。このアニメは、昔なつかしい「日本昔ばなし」風のタッチで、しかも解説のナレーションが市原悦子さんでした。展示を見る前から独特の雰囲気を作り出してくれています。
展示室では、江戸時代の女性が寺に駆け込んでから離婚が成立するまでの過程が、わかりやすくまとめられています。また、離婚に関して吟味する寺役場(今でいう家庭裁判所のようなところ)の一部を復元した展示もありました。当時、縁切りにかかわった人たちの役割なども細かく解説しています。
縁切・縁結・厠に願いを込めて
展示のほかに、とてもユニークな場所がありました。それが 「縁切・縁結 専用厠」です。 「トイレで縁切り?」 と不思議に思い、解説板を見てみると……。何でも縁結びをするだけではなく、その前に縁切りをしてから新たな縁を結ぶことが大切だとありました。
もともと関東で縁切りというと、夫婦間の離婚や親子の間の縁切りなど、縁起の悪い物というイメージが強かったようですが、関西では様々な悪いことを断ち切るという考え方があったそうで、縁切りは縁結び同様に昔から大切に考えられてきたそうです。
実際に大阪の持明院 (じみょういん) には 「縁切厠」 があり、その中で離縁を祈れば必ず縁が切れたといわれていたほか、京都の清水寺にも 「縁切り・縁結び用の厠」 が二か所並んで建っていたと、文献にも記述されているそうです。こうした昔からある縁切りの文化を現代によみがえらせたのが満徳寺の 「縁切・縁結厠」 です。
お札 (有料) を購入し、館内にある記載台で記入します。左の枠が黒い札が縁切り用で、赤札が縁結び用です。記載台には黒と赤のボールペンも用意されていますので、それぞれの色のボールペンで記入します。
様々な例が挙げられていて
- 独身と縁切り → 良縁と縁結び (結婚成就)
- 現在の夫や妻と縁切り → 幸せな再婚と縁結び
- 借金と縁切り → 商売繁盛と縁結び
- いじめと縁切り → 良い友人と縁結び
- 交通事故と縁切り → 無事故・安全運転と縁結び
- 病気と縁切り → 健康な体と縁結び
右の白い便器が縁切り用、左の黒い便器が縁結び用です。縁切札と・縁結札をそれぞれに流すわけですが、まさに “白黒つけて” 人生を前進してもらいたいというところですね。
また、毎月 “縁切りの日” と “縁結びの日” が数日あり、この日にお札を流すとさらに良いそうで、資料館のスタッフにお札を託して帰られる人もいるほか、遠方で足を運べない人には郵送でも受付ているそうです。
■DATA
太田市立縁切寺満徳寺資料館
住所 : 〒370-0425 群馬県太田市徳川町385-1
電話 : 0276-52-2276
入館料 : 大人200円、小・中学生は無料(団体は20人以上で大人160円)
開館時間 :午前9時30分~午後5時まで (入館は午後4時30分まで)
休館日 : 毎週月曜日 (月曜が祝日の時は翌日)、年末年始(12月29日~1月3日)
備考:2015年夏現在、資料館では企画展「江戸の道徳教育」 の展示のため、縁切り関連の展示が少なくなっていますが、2015年秋から再び縁切り関連の展示を行う予定です。
満徳寺の帰り道、ぜひ立ち寄りたい 「縁結び門」
満徳寺から車で5分ほどのところには世良田東照宮と呼ばれる場所があります。東照宮といえば日光ですが、三代将軍・家光が日光東照宮を大改築した際に、奥社の拝殿と宝塔を徳川氏にゆかりの深い世良田の地に移したそうです。そんな、もうひとつの東照宮の敷地内には、「開運稲荷」や「縁結び門」など、これまた縁起の良いスポットがあります。門の蹴放 (けはなし) と呼ばれる溝のない敷居をまたいで参拝すると良縁が成就すると言われているそうです。男女の仲だけではなく、色々な人間関係に溝ができないよう、この敷居をまたいでお参りしてみてはどうですか?