猛暑日が続く日本列島、熱中症緊急対策
熱波による熱中症を甘くみない
本年は1週間に1万人を超える人が熱中症の症状で救急搬送されるという、大変な異常事態です。記録に残らない深刻な体調不良や、病院に行くような症状になった人はその数十倍に及ぶことでしょう。このまま暑さが長引けば、過去、最も暑かった2010年の熱中症による死者数1,730名に近づく可能性すら考えられます。熱中症は生死に関わる深刻な「病気」というような認識を持つ人は少なく、軽視しがちです。さらに普段から頭痛や眩暈(めまい)などの持病を持つ人は体調の変化に気づけず、深刻な状態になるまで放置してしまう傾向があります。熱中症は最初、頭痛、眩暈、立ちくらみ、筋肉痛、こむらがえりなどの症状から始まり、発汗による体温調節が不能になると「熱失神」「熱けいれん」などの症状に移行します。さらに体温の調整機能が麻痺してしまうと、多臓器不全につながり、血液の凝固などによって死に至る可能性が高まってしまうというもの。高温の場所で、不快感、倦怠感、吐き気、嘔吐、意識障害などの症状が出たら病院搬送の必要を考えましょう。
高齢者、幼児に及ぶ熱中症の危機は周囲が管理
熱中症の死者数はその半数近くが65歳以上の高齢者で占められています。体温調整機能が低下し、体力も低下している高齢者は被害に最も遭いやすいと言えるでしょう。そして年代別の熱中症発生原因を見てみると、15歳~19歳はスポーツ中に発生、30歳~59歳は労働中、60歳以上の人は日常の生活の中で発生しているケースが多いようです。(総務省データ)そして0~4歳の幼児の熱中症死者は自動車内での閉じ込めによるものが多数を占め、これは周囲の注意不足がなければ確実に防げた事故です。つい先日、高齢者の3姉妹がエアコンのある住居内で全員熱中症により死亡しているという、悲惨な事故が報道されていましたが、我慢強く、エアコン嫌いなどの習慣は、時に死を招いてしまうということを、周囲を含めてきちんと認識し、近所での見守りや、町内の自治会などでの注意喚起などを徹底し、悲惨な事故を少しでも減らしていただきたいものです。
熱中症予防対策
人は気温が高くなると、体温調節のために、発汗し、体温を下げる機能があります。汗が体から蒸発するときに体に溜まった熱を放出してくれるのですが、高齢者はこの機能が低下しているために熱中症の被害を受けやすくなります。そして発汗状態が長く続くことで、体内の水分や塩分などが不足すると、体内の血流量が減り、粘度が高くなるなどして、汗が出なくなったり、臓器に機能不全が始まったりします。これは気温が30℃前後であっても、湿度が高いと汗が蒸発せずに、体内に熱がこもったままになる場合もあります。室内が28℃を超え、湿度が70%を超えるような場合は、必ずエアコンや扇風機などを併用して、室内の温度・湿度を下げるようにしましょう。
気温が30℃を超えるような夏季には、喉が渇く前に積極的に水分をまめにとることが一番の予防。同時に塩分などを含んだものを取るようにします。市販のスポーツドリンクや経口保水液(食塩とブドウ糖が含まれる)などを飲むのも良いですし、塩分の含まれた「熱中症予防飴」などを定期的に摂るのもおすすめです。寝ている間に発症する場合もありますので、寝る前にコップ一杯の水を飲むのも習慣づけたいところです。気温が高いとついビールなどが美味しくなるのですが、アルコールは利尿作用を強めるので、体の水分補給にはなっていません。またコーヒーや紅茶などカフェインを含む飲料も同様に利尿作用が強くなります。大量に発汗した後は、必ず水やスポーツドリンクなどで水分補給をし、アルコールやカフェインを含む飲料は程々にしておきましょう。
熱中症の症状を和らげるには
熱中症の症状になっていると思われたら下記の対応が必要です。
1. 暑い場所から涼しい(クーラーの効いた)場所や日陰に移動させる
2. 意識のある場合は冷たい水をすぐに補給する。
3. 衣服をゆるめ、濡れたタオル等で体を拭く。
4. 首回り、腋の下など動脈近くを冷却材やアイスパックなどで冷やす。
5. 団扇や扇風機などで体に風を送る。
6. 症状が回復しない、意識がはっきりしない場合はすぐに救急病院へ運ぶ。
熱中症は生死にかかわりますので、応急処置をきちんと覚えておきましょう。
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