インプラント治療から数年後

インプラント体、アバットメント、上部構造(クラウン)。歯科インプラントは3つのパーツから出来ています。

上部構造の交換

奥歯に埋入したインプラント上部構造の交換

左右の奥歯4本ずつの欠損に対して3本ずつ計6本のインプラントがブリッジで入っている患者さん。歯ぎしりや食いしばりが強い場合、天然歯と同じくインプラント上部構造のすり減りがおこり全体の咬み合わせも低くなってしまいます。

長い間使ってくると、骨の中の土台となるインプラント体はそのままで、上部構造の交換やリペアを行うこともあるのです。インプラントが3つのパーツでできているからこそ、擦り減ったり割れてしまったりした上部構造を簡単に修理・交換することができるのです。

上部構造の交換までの期間

歯ぎしりや食いしばりで擦り減ると言ってもわずか2~3年で擦り減ってしまうわけでは有りません。もともと強度をしっかり考え製作される奥歯の上部構造。よほどのことが無い限り交換は不要ですし、影響が出ていたとしても大きく割れたり欠けたりしたわけでなければ10年以上は交換が不要な場合が多いでしょう。

歯科業界は日々進歩しています。技術的な面でもそうですし、使用する機材や材料も新しいものがどんどん開発されています。最初の治療から10年以上経過していると、当時の上部構造で使用していたものよりも、より審美性、機能性に優れた上部構造に交換することも可能なのです。

上部構造素材の移り変わり

現在のようにジルコニアやニケイ酸リチウムといった強度のあるオールセラミッククラウンが実用化されていなかった時代に装着された上部構造。特に奥歯のように咬み合わせの際に複雑な力が掛かる部位のインプラントブリッジで白くしたいという審美性を求めたオーダーとなると、鋳造して製作したメタルフレームの上に陶材を焼き付けるメタルボンドか、同じく鋳造して製作したフレームの上にハイブリッドセラミックス(セラミックとレジンを混ぜた合成樹脂)での製作が中心でした。

しかし、共に強度に限界がある為、インプラントのような遊びのない強い咬合力がかかるものには少し強度不足であり、強度を補うために本来は内側に入れるメタルを外側にも露出させ、弱い部分をサポートするような努力も必要だったのです。

歯科技工士のテクニック

上部構造の製作は歯科技工士が担当します。患者さんと直接触れ合う機会は少ないですが患者さんや担当歯科医師の希望をきき理想的な上部構造を作りあげる、まさしく職人です。

交換後の上部構造は強度がしっかり保てるジルコニアをフレームとしてだけでなく咬合面を含めてジルコニアをほぼ全体露出。ここ最近ではジルコニアでも透明感の高いものが出てきているが、強度を優先させるとどうしても透明度は低くマットな白い色味になってしまいます。咬み合わせの強い患者さんの上部構造には強度の優先が不可欠であり、咬合面は無垢のジルコニアに簡単な色付けと表面処理を行うだけでレイヤリング(陶材を築盛すること)はしません。

しかし、機能性だけでなく審美性も追求したいところであり、笑った時に露出する奥から3番目、4番目の小臼歯はジルコニアフレームの唇側面のみ事前にカットバック(えぐって凹みを作る)しておき、その部分だけレイヤリングで前歯との色調を整え違和感の無いようにする。且つ強度を保つためにレイヤリングの箇所は咬み合わせとは関係のない所までにとどめ、咬み合わせで強く当たる部分はジルコニアで製作。

このような注文に応えられるようになったのも素材の進歩と技工士のテクニック上昇による賜物です。

長期安定性のいい材料で限りなく審美性を追求すること。これこそが近代歯科補綴のゴールデンスタンダードなのです。そしてそのスタンダードを守るために1本の歯を再現する為の研鑽を積むことを惜しまないこと。実は患者さんから見えづらいところで歯科技工士が切磋琢磨しているのです。


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