脳・神経の病気

慢性硬膜下血腫の診断・症状・治療

慢性硬膜下血腫は外傷から1ヵ月前後で発病する病態です。頭痛・嘔気・麻痺・痴呆症などの症状が出現します。治療は手術で、予後は良好です。治療可能な認知症のひとつです。

井上 義治

執筆者:井上 義治

形成外科医 / 皮膚・爪・髪の病気ガイド

「慢性硬膜下血腫」とは

頭部外傷で脳出血とよばれる病気は「硬膜外血腫」、「硬膜下血腫」、「脳内血腫」の3つがあります。血の固まりである血腫が脳の組織の直上や脳内に形成される病態です。

硬膜下血腫は脳挫傷に伴い脳表面の橋静脈(きょうじょうみゃく)が障害され血腫が発生します。頭部外傷でよくみられる外傷です。

橋静脈

硬膜下血腫は橋静脈が障害され発生します。


慢性硬膜下血腫の場合、小さな静脈の傷から少しずつ出血して、時間がたってから大きな血腫が形成されて始めて脳を圧迫し発病すると考えられています。

硬膜下血腫の分類

急性を除く、亜急性硬膜下血腫と慢性硬膜下血腫を合わせて「慢性硬膜下血腫」として扱うことが多いです。いずれにしても外傷を受けてから通常1ヵ月前後で発症した場合、慢性硬膜下血腫と呼んでいます。外傷の時期と発病の時期が異なることが特徴です。

  • 急性…3日以内
  • 亜急性…3ヵ月以内
  • 慢性…3ヵ月以降

慢性硬膜下血腫の年齢、性差

急性硬膜下血腫が若年者に多いのに対して、慢性硬膜下血腫は高齢者に多く発生します。50歳以上の男性に多い疾患です。歩行中や階段の転落など軽微な事故で発生すること多いです。また頭部外傷の記憶がない方も、3割程度ありますので注意が必要です。もちろん交通事故・転落事故・スポーツ外傷で、初期に急性硬膜下血腫を発症しない場合、慢性硬膜下血腫を発病することもよくあります。

慢性硬膜下血腫の症状

症状としては頭痛・嘔気・麻痺・けいれん・失語症・痴呆・尿失禁・便失禁などがあります。水頭症と同じく、慢性硬膜下血腫も治療可能な認知症の一つです。

慢性硬膜下血腫の診断

■CT
頭部外傷の初期検査としてCT撮影を行います。

CT

頭部単純CT像



血腫は静脈からの出血のため徐々に増大し、三日月状の形態となります。脳圧が亢進し、脳脊髄液でみたされた側脳室が圧迫され、縮小します。

■MRI
血腫以外の脳組織を診断するにはMRI検査が必要です。

MRI

頭部単純MRI像


慢性硬膜下血腫の治療法

基本的に手術治療が必要です。

■穿頭血腫除去術
局所麻酔下に骨に小さな穴をあけ血腫を洗浄し除去します。血腫の被膜は残りますが、脳の圧迫が解除され症状は消失します。

手術

穿頭血腫除去術


慢性硬膜下血腫の予後

慢性硬膜下血腫の予後は良好です。治癒可能な認知症のひとつでもあります。少しでも早期に脳外科で治療を開始することが必要です。


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