全チーム優勝の可能性アリ、という状況を楽しむ
考えようによっては、今年のセ・リーグはまれにみる面白いシーズンなのかもしれない。
60試合を消化した時点で、セ・リーグは1位から6位までが3ゲーム差圏内、しかも貯金しているチームがゼロという異常な状況で、この低レベルの争いを“セ界の終わり?”(関連記事)と書かせてもらった。
しかし、オールスターゲームが終わり、後半戦に突入しても、その状況はあまり変わらない。ここまで来たら、6位・中日まで優勝の可能性があるというまれに見る面白い戦いに思えてきた。ということは、新しい“セ界の始まり”とプラスにとらえた方が野球を楽しめそうだ。
その中でも注目は、ヤクルトだ。7月22日、DeNAとの試合を2対1でものにし、4連勝。勝率を5割(43勝43敗1分け)に戻し、阪神と並んで7月3日以来19日ぶりの首位に浮上した。
数多くの故障者に泣かされながらも、この踏ん張りは、真中新監督のやりくりのうまさを要因に挙げられるが、1人の打者がチームを引っ張り、その存在がチームに自信をもたらせている。山田哲人内野手(23)がその人だ。
ヤクルトが優勝を狙うには、山田のバットがカギ
後半戦から「3番」に座る山田は、DeNAとの3連戦を3戦連続マルチ安打で、14打数9安打5打点と手がつけられなかった。とくに21日は20号3ランを含む4安打と大爆発。2年連続20本塁打の大台達成は、同僚の畠山を抜き去り、本塁打ランキングで単独トップに躍り出た。「ビックリですよね。20本打てるなんて思ってもいなかった」と目尻を下げる。昨季、日本人右打者最多安打(193安打)をマークした男が、今季はリーグ最速で20号に1番乗りを果たしたのだから無理もない。
開幕を「1番」で迎え、前半戦最後の5試合は「4番」を任せられた。後半戦に入り、左内転筋の肉離れで戦列を離れていた畠山が4番に復帰したため3番に入った。この3番に定着すると、なおさら輝き出した。
メジャーリーグでは、4番ではなく3番にそのチームの最強の打者を置くケースが多い。いろいろな理由が考えられるが、その打者にとって、一回に必ず打席が回ってくるため、スムーズに試合に入れる利点がある。
先発投手は、立ち上がりに難がある投手が多いため、3番の働き具合によって、一回に一気につかまえられる可能性が高い。また、3番は、4番につなぐという器用さも必要である。その点、確実性、長打力を持ち合わせている山田は3番に最適なバッターといえるのではないか。
山田にとって、ひとつ気になることがある。それは、体調管理だ。夏場は弱いと公言し、キャンプ中は79キロあった体重が、現在は3キロ減の76キロに。1人暮らしの山田は、食事は外食がほとんどで、親しい飲食店の店主がバランスのいい食事を作ってくれているそうだが、自分自身が食事や栄養面を勉強するか、そういう管理をしてくれるプロと契約するかして、細心の注意を払っていくことが必要になっている。
いずれにしても、昨年最下位のヤクルトが優勝を狙うには、山田のバットがカギを握っているのは間違いない。