ザハ氏による新国立競技場案は、森喜朗元首相には生ガキに見えたようです。

ザハ氏による新国立競技場案は、森喜朗元首相には生ガキに見えたようです。
 

再び公募するなら、応募条件見直しが必要

連日のように、報道される新国立競技場建設問題。当初1300億円で済む競技場建設費が膨れ上がって3000億円を超える試算が弾き出されたザハ・ハディド氏のデザイン案。すでに賞金3000万円も含めて、監修デザイン費として十数億というお金が渡っているとされています。元々が公募のコンペティションでありますから、ザハ氏に悪意はないとは言え、そのお金の出所は税金。日本国民としては実現しもしないデザイン案に巨額の損失を抱えてしまったわけです。庶民感覚からすれば、非常にもったいない話。

ラグビーに命を捧げる森喜朗氏(日本ラグビーフットボール協会名誉会長、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会会長)は2019年ラグビー W杯の開催地になる新国立競技場だけに反対するのかと思っていましたが、意外にも「僕はもともと、あのスタジアムは嫌だった。生がきみたいだ」と否定的かつユニークなご回答をされたことには国民の一人として大変、驚きを隠せませんでした。

何はともあれ、ゼロベースから見直すことが決定された新国立競技場建設計画。2015年9月には建設計画が新たにスタートする予定ですが、二年以上費やした時間がムダになったのに加え、2020年の五輪開催までの時間がありません。その為、国際公募を再度実施するかどうかもまだ明確には決まっていないのが現状です。

しかし、世界に開かれた日本をアピールする上で公募を実施するというメリットはやはり大きく、ぜひ公募でアイデアを募ってほしいと考えます。その上で9月に再び国際公募を実施するのならば、ぜひともおすすめしたいのが“応募条件の見直し”です。

ハナから若手建築家には縁のなかったデザイン案公募

元々、この新国立競技場デザイン案公募は報道でも伝えられている通り、2012年7月20日に募集要項が発表され、同年9月25日午後5時までに作品提出締め切りとなるスケジュール進行。つまりは短期間でアイデア立案から作品提出までを要する過密なものでした。

アイデアは考えるものではなく、降ってくるものなどと言ったりしますがこの間に考えをまとめあげ、作品提出までこじつけた世界に散らばる建築家の皆様はプロ中のプロとしか言いようがありません。

そうして集まった作品数、計46作品(国内12、海外34)。日本を代表する国立競技場のアイデアを募る国際公募なのに、この数字、異様に少ないと思いませんか? 

この数字の裏には厳しい応募条件があります。

次のいずれかの国際的な建築賞の受賞経験を有する者
1)高松宮殿下記念世界文化賞(建築部門)
2)プリツカー賞
3)RIBA(王立英国建築家協会)ゴールドメダル
4)AIA(アメリカ建築家協会)ゴールドメダル
5)UIA(国際建築家連合)ゴールドメダル
 
いずれも世界的な建築賞であり、中でもプリツカー賞は建築界のノーベル賞と称される賞ですが、応募資格として応募者の代表者もしくは構成員にこれらの受賞経験を有する人がいなければ応募さえできないのです。確かに当時から迫り来る東京五輪のことを予期した上でなるべく早く工事に着工したかったと考えれば、実績のある有識者を囲んでアイデアを募れば良い案が手早く集まるでしょうし、何より、選ばれた案にも有名なあの人が考えたとなれば、誰にでも言い訳ができます。

しかし、公に募ると書いて公募です。このように応募する条件が高過ぎては若い人から新たなニューヒーローも生まれませんし、権威ある人達だけで造られたものには確実である一方、夢がありません。五輪のメイン会場ともなる聖地を作ろうとしているのに、このような姿勢であったことは当時も今もほとんど知られていなかったことでしょう。

そもそもこの制約下において応募が可能な人は1990年代以降58名しかおらず、審査員に名を連ねる安藤忠雄氏、リチャード・ロジャース氏、ノーマン・ フォスター氏を除けば、55名のみ。

正にオールスターによるアイデア出しが行われたわけですが、若手もこの公募に参加できていた上で仮にオールスターの作品が選ばれていればより納得のいく新国立競技場が誕生していたかもしれません。全てはゼロベースになった今、若手も参加できるように応募資格の改定を考えて頂きたいものです。