周りの大人ができること
親よりも周囲の大人のほうが気付きやすい、子どもの変化もあります。
元少年Aも佐世保の少女も、猫を殺しているうちに残虐性がエスカレートし、挙げ句、事件を起こしました。子どもの残虐行為を見つけたら、頭ごなしに叱るのではなく、気付いた大人が「かわいそうだから、やめよう」などと積極的に声をかけて止めるなど、子どもに直接働きかけられるといいですね。不審な行動を見かけたら、問い詰めるのではなく、その子に会ったら「挨拶をする」ことを心がけましょう。周囲の大人の無関心や、子どもの「孤立感」が、問題行動をエスカレートさせるからです。
また、猫などの不自然な死体を見つけたら警察に届けましょう。重大な犯罪に発展する前に発見し、専門的な支援に繋げることができた方がいいからです。猫を殺し始めた子どもは、素人の説教や指導で改善できるとは思わない方がいいでしょう。
家族全体を見守る
問題行動を起こしている子どもだけではなく、その子どもの家族全体を見守る目を地域に増やすことも大切です。家族心理学においては、子どもの問題行動はその子だけの問題ではなく、家族の問題が“家族でいちばん敏感な子どもに現れた”と捉える考え方があります。DVや虐待のある家庭では、子どもの暴力性が自分より弱いものに向くことは少なくありません。
感情表現や共感の少ない家庭では、自分や他人の感情に気付きにくい子どもに育ちます。共感性の乏しい子どもの親もまた共感性に乏しく、子どもへの適切な働きかけが難しいことも少なくありません。そのことも頭に置いておきましょう。
最初に書きましたが、残虐さをともなう子どもの問題行動の背景に、他の疾患(注意欠如・多動性障害[AD/HD]、自閉症スペクトラム障害[ASD]などの発達障害や、適応障害、双極性障害や抑うつ障害などの精神疾患)があることも少なくないので、子どもや家族を適切な支援につなげるのも大切なことですね。
どんな子どもにとっても、大人との関わりは多様なほどいいのです。問題行動を起こしている子どもとその親だけの問題とせず、地域社会で見守り、関わっていくことを目指しましょう。