なぜ親は子供を追いつめてしまうのか
「あなたのため」は子供を追いつめる言葉でもある?
娘が東大に合格し、医師になるための国家試験に合格したとき、両親はきっと鼻高々だったことでしょう。自分たちのしてきた少々厳しい教育は、間違っていなかったと確信していたに違いありません。しかしそれは、明らかに間違っていたわけです。
娘を追いつめ、死ぬほどに苦しめているのに、両親はなぜ気づけなかったのでしょうかか。なぜそれほどまでに娘を追いつめなければならなかったのでしょうか。
「教育虐待」という言葉を知っていますか? 「教育虐待」とは、「あなたのため」という大義名分のもとに親が子に行ういき過ぎた「しつけ」や「教育」のことです。
学歴コンプレックスがあるにせよ、高学歴ルートから外れるのが怖いにせよ、人生の成功を学歴にとらわれているという意味で同じです。コインの裏表でしかありません。「学歴がないとまともな人生を送れない」という恐怖心を植え付けることで子供をコントロールしようとする。それが教育虐待の基本構造です。
大人になってからも続く苦しみ
教育虐待を受けると子供にどんな影響が出るのか。教育虐待を受けて育った大人はどんな人生を歩むことになるのでしょうか……。ある女性は、結婚したときから、頻繁に夫に八つ当たりするようになりました。さらに子供をもうけようと思ったときから、心のバランスを崩しました。生理も止まってしまいました。夜中に突然「子供なんていらない!」と叫んでしまったこともありました。心理カウンセリングを受け、自分が教育熱心過ぎる母親の支配から抜け出せていないことに気づきました。その女性は、小さなころから無理矢理勉強をさせられ、常に母親の過干渉を受けていたのです。
また、母親からの過干渉を受け成人した別の女性は、就職してからも職場での人間関係をうまく築けず、うつ病を発症してしまいました。教育虐待に限らず、過度な抑圧を受けて育った人は、依存的になりやすく、他者と適度な距離感を保つのが苦手な傾向があります。結局実家に戻り、27歳で自ら命を絶ってしまいました。
配偶者に対し、子供に対し、なぜかいつもイライラしてしまったり、自分でも理不尽だと思う怒りをぶつけてしまったりする場合、あなたももしかしたら、教育虐待の被害者なのかもしれません。
勉強のことで叱るのは、どこまでならOKなのか?