扇風機に新たな市場価値を与えた「GreenFan」という発明

白物家電の分野のなかには長年にわたって低価格化が進み、大手家電メーカーが人員をほとんど割くことがなく、縮小しているアイテムがある。

それらはコモディティ化(競合する商品同士の差別化特性が失われた)したアイテムと見なされ、大手家電メーカーが少しずつシェアを落とすなか、いわゆる“ジェネリック家電”(ブランドにこだわらず技術的には大手メーカーと同等の部品を使いながら、過剰な機能を落とし低価格を実現した家電)メーカーが、その分野でシェアを伸ばすという構図となっている。

そんな技術面や進化面で見放されたと思われた“利益率の低い家電”をあえて見直し、付加価値をつけて、一般的な同ジャンルの家電の数倍もの価格で売り、それが新たな市場として受け入れられ、再び大手メーカーが追随するような市場形態を取っている商品がある。

近年、そういった戦略で注目されている家電ベンチャーがバルミューダだ。2010年に発売し、その後のDCモーター高級扇風機を牽引した1台として知られる初代GreenFanは、当時としては誰もが目を疑うような価格(3万5000円前後)で売り出された。一般的な扇風機の価格が3000円や5000円だった時代に、その10倍もの価格がつけられた扇風機。そんなものは誰も売れると思わなかった。

GreenFanはそのデザイン性も高く評価され、グッドデザイン賞を獲得した。

GreenFanはそのデザイン性も高く評価され、グッドデザイン賞を獲得した。


だが結果は、その後の震災などの影響もあり、節電需要が高まったことで、生産が追いつかないほど売れた。

この成功を招いたもっとも大きな理由が、「自然界と同じく、面となって吹いてくる心地の良い風」を生み出したGreenFanテクノロジーを搭載したところだ。

風は目で見ることができないが、「どんな風が吹いてくると気持ちが良いですか?」との声に、人々はこぞって“自然の風”と答えたという。そのユーザーニーズをしっかりと汲み取り、それまで扇風機に使われることはなかったDCモーターを採用。

ファンにも工夫を施し、面で吹く自然な風を再現。

ファンにも工夫を施し、面で吹く自然な風を再現。

細かな羽根の回転制御を可能としたことと、その羽根自体も内側と外側にそれぞれ羽根がある二重構造の羽根を搭載した。内側から吹く速度の遅い風に対し、外側から吹く速度の速い風が、気圧差により引き込まれ衝突――ぶつかった風同士が破壊され、空気が面となって人の位置に届くという仕組みを開発することで、自然の風を生み出すことに成功した。

またそれ以前に、ダイソンが“エアマルチプライヤーテクノロジー”を使って、羽根のない扇風機を発売していたこともあり、扇風機の市場価格が上がることで、大手メーカーにとっても新たな利益を生み出す市場になったという事情もある。それらが震災を転機に爆発的に売れたことで、一気に各メーカーがこの市場に参入したのだ。

>>そんなバルミューダが扇風機に続いて復活させようとしている家電とは