避難所生活で必要なものは?避難時に準備すべき防災グッズとは
避難所での過酷な生活を避けるために、本当に必要なもの、便利なものを用意しておきましょう
■「1週間分の水と食料」は、本当に必要なものなのか?
政府の中央防災会議では、交通インフラなどの長期停止に備えて「1週間分の水と食料を備蓄しよう」と推奨しています。しかし、実際に親子4人分の水と食料を目の前にしてみると、その膨大な量に驚きます。水を1日1人3リットルとすると、家族4人分で1日12リットル。1週間分で84リットル。つまり、2リットル6本入りの箱が7箱必要です。食料も1人3食分として84食の食事を用意するとなると、かなり悩むところでしょう。
2013年にオールアバウトで行った意識調査では、水や食料の備蓄を1週間分準備しているのは東京で22.5%、大阪で17.4%(意外に高率)でした。しかし、これは東日本大震災から2年しかたっていない時期だったからでしょう。その後、毎年下がっているのは明らかなので、今現在はもう10%~15%、地方都市であれば1割に満たない数字であると予測できます。
■避難生活で本当に役に立つグッズとは
避難生活に備える、ということを考えたとき、まずはどこのご家庭にもある「冷蔵庫の中身」をうまく活用することが第一で、それほど大量の水や食料はいらないのでは、というのが自分の考えです。
停電している状態であれば、もちろん冷凍食品や生鮮食品などは初日か2日目に消費しなければいけませんが、冷凍庫にペットボトルなどを入れて凍らせておけば、ある程度冷蔵庫の温度を保つことが可能になります。
冷蔵庫の中身が空になったら、その段階で初めて、備蓄している缶詰やレトルト食品などを消費し始める、という考え方をすれば、ずいぶんと揃える品数も楽になるのではないでしょうか。
おすすめなのはパスタや蕎麦などの「乾麺」を備蓄しておくこと。電気釜が使えない状態で、鍋などでご飯を炊くのは、意外にうまく出来る人は少ないです。茹でるだけで食べられる麺類は、賞味期限も非常に長く、缶詰やレトルト食品などと合わせればお米よりも食事のバリエーションも作りやすいと思います。
防災グッズは日用品やアウトドアグッズを利用しよう!
「賞味期限は10年」とか「未使用ならば20年使用可」など防災用品にはやたらと長期保存の効く商品が多く存在しますが、たいがい割高なものが多く「長期間保存が可能」がゆえに「買い替えなくても大丈夫」の気持ちが押入れの奥にしまい込む結果になり、気がついたら期限を過ぎていた、など防災用品に対しての関心を失くしてしまう原因になります。防災用品・備蓄品については年に二度は(3月・9月)に全てチェックし直して、期限が近いものは家族で毎年消費してしまうようにするのが一番でしょう。古いものから消費して、新しい物を買い足していく「ローリングストック」をすれば普段使いの食品で十分なので、長すぎる期限の災害時用の食品は必要がないのです。また食料品以外でも、なるべく普段使い可能なものを防災用品として利用しましょう。アウトドアの趣味を持っている人は幸いです。キャンプ用品などはほとんどの場合災害時に活用可能です。そもそも「電気・ガスのない野外で生活する」ための商品なのですから、避難所でスペースが確保できないときなどはテント、寝袋、ランプなど、フルセットでキャンプ道具が役にたちます。簡易式のコンロなども普段から使っておけば、ボンベの本数なども把握できていることでしょう。そして「不便な生活」を楽しめるような人であれば、きっと過酷な避難生活においても、明るく切り抜けることができると思います。
水や食料は当たり前! 命を守る本当の「防災用品」とは
本来「防災グッズ」と名付けるのであれば、災害を防いで欲しいものなのですが、そのほとんどは「避難生活を快適にする用品」と思って間違いありません。しいていえば「家具の固定具」などは「命を守るもの」であり「防災用品」と言えるでしょう。忘れてならないのが都市部で起きる火災による被害。少なくとも自分の家から火災を発生させないためには「消火器」の存在は欠かせません。マンションなどでは外廊下などに置いてある家も多いかと思いますが室内にもすぐに使用できる小型の消火器を用意しましょう。各家庭の台所に、すぐに使用できる消火器さえあれば、どれだけの火災による被害が減ることか、と思います。ちなみに自分のマンションでは自治会が全家庭に配布しています。色々な家庭の防災グッズを見させていただくと「一時避難袋」に入れておくべきものと「備蓄用品」がごっちゃになっている家庭が良くあります。「一時避難袋」はあくまで避難所に移動するまで、安全にたどり着けて、補給が始まるまでの短時間、そこで過ごすために必要なものが入っていればいいものです。大量の水や食料は入れる必要はありません。ヘルメットや防塵のためのマスク、軍手などは安全に避難所にたどり着くために必要なものです。そして個人が初日からないと困るものを自分で考えることが重要です。健康を維持するためのものなども「命を守る」防災用品と言ってもいいでしょう。持病の薬や生理用品なども忘れてはいけません。また避難所では睡眠を取ることが大変です。そんな時に備えアイマスク、耳栓なども入れておきたいアイテムになります。(詳しくは別記事・防災グッズの必需品は?地震対策の避難グッズ全リストを参照)
避難所に行かないで済むようにするための備蓄法とは?
関東で発生の懸念されている「首都直下型地震」ではエネルギー・水道の長期的な停止も予測されています。特に「電気がある」ことを前提に生活が成立している高層マンションの住人はすぐに困ってしまいます。電気が止まれば、生活の足となるエレベータだけでなく、水も各戸に届かなくなります。誰も水や食料を届けてはくれないので、備蓄が無くなれば建物は全く被災していないのに、避難所に頼らなければならなくなる可能性が高くなります。東日本大震災の時も、被害の全くなかった集合住宅なのに、インフラが回復しないため、無人になっている建物をいくつも見ることがありました。避難所は、被災したことのない人にとっては、全く信じられないほどの過酷な状況が発生します。エアコンのない固い床の体育館にシートを引き、わずかばかりのスペースで、プライベートな空間は存在しません。他人の出す話し声やいびきは安眠を妨げ、暴力や盗難などは日常茶飯事の出来事になります。ちょっとした隙に自分の物が無くなってしまうので、持ち物にはすべてマジックで名前を書き、トイレに行くときは荷物を風呂敷にまとめて縛っておく必要があります。精神的にも、身体的にもまいってしまう人が続出します。そんな過酷な場所に行かないようにするためには、インフラが回復するまでの十分な備蓄をしておく必要があります。
まず集合住宅の上層階の住民は簡易トイレを最低一週間分用意しましょう。汚物はまとめておいて燃えるごみとともに出すことが可能です。毎回トイレに水を流していると、いくら水の備蓄をしていても足りません。そして「補給が無くても一週間は大丈夫」な量の水と食料、調理用の簡易コンロとガスボンベは必須です。さらにランプや非常用のバッテリーなども用意できれば万全でしょう。あとはエレベータを使わなくても一日に何度か階段を往復できるような体力を持っていること。それさえあれば、自宅の方がよほど快適に避難生活を送ることが出来ることでしょう。
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