ミサワホームが開発した被災判定計「GAINET」
わかりやすい例を紹介すると、軽量鉄骨造の建物のブレース(筋交いのようなもの)が伸びきってしまったなどというケースもありました。このようなケースでは、改めて外壁あるいは内壁を取り払い、ブレースの梁を取り戻す補修工事をする必要があります。放っておくと、大きな余震が来たりした場合、倒壊する危険性があるためです。東日本大震災の時、津波被害があった場所以外では建物の被害が少なかったように考えられますが、全半壊が少なかっただけで、住宅には結構な被害があったのです。
さて、このような住宅の被害の状況を地震が発生した時点である程度正確に把握できるようにするシステムが、先日、ミサワホームにより発表されました。被災判定計「GAINET(ガイネット)」というシステムがそれです。
これは建物の基礎部分に設置。地震波を計測し、ミサワホームのオーナーサポートセンターに瞬時に計測情報が伝達され、建物ごとに建物と地盤の被災度や補修などの緊急度を把握できるようにするというものです。
伝えられた情報を分析し、建物ごとの構造情報と合わせることで、ミサワホームでは全国でGAINETを搭載した住宅の被害状況を「20~30秒後には把握できる」そうです。
これを可能にするのがスマートフォンなどで使われる高速データ通信が可能なLTEネットワーク(KDDI)。バックアップ電源を搭載しているため、停電時においても一定時間は通信可能だといいます。
なお、建物内部(リビングなど)には「表示部」も設置され、GAINETが感知した初期微動(P波)を、主要動(S波)が到達する前に警告音を発してくれます。このほか、通常時は温度や湿度を表示します。
システムそのものの導入価格は10万円程度。設置後、5年間は別途費用(KDDIへの通信料など)はかからないそうです。現状ではミサワホームの新築住宅のみが対象です。
大地震による混乱から住まいや暮らしを早期に復旧するために
ミサワホームはこのシステムにより、被害が大きかったと思われる住宅を特定しやすくなります。そうであればその住宅があるエリアに点検や補修などを行う人たちを優先して、大量に派遣できますから、効率よく復旧活動を行えるというメリットが生まれるわけです。また、オーナー側のメリットとしては、仮に大地震で大きな被害を受けたとしても、すぐにミサワホームの関係者が点検・補修に駆けつけてくれれば、被災した状況の中でも安心感を得られることがあります。それにより、暮らしの再建へいち早く一歩を踏み出すことができるわけです。
どの住宅事業者でも同様でしたが、東日本大震災の発生当時、情報・交通インフラが混乱。実際に現地に出向き、被害状況を把握するのに大変な苦労をしました。
一方で、「発生直後から電話回線がパンクし、オーナー様への対応がパニックになってしまった」(ミサワホーム関係者)などという事態も発生したといいます。
このような状況を回避するためにも、住宅の地震被害の状況を早い段階から、ある程度正確に把握できるシステムというのは、今後発生する大地震への備えとして、非常に有効的なものになるのではないかと考えられます。
ところで、なぜ今のタイミングで地震対策の記事を書いているのかというと、2015年5月30日には関東地方で震度5弱の地震が発生したり、全国的に火山活動が活発化していて何だかちょっと不気味な気配がするからです。
首都圏直下型地震や南海トラフ大地震はもちろん、日本ではどこに住んでいても地震のリスクからは免れられません。この不安が杞憂に終わればいいのですが、地震に対する注意喚起の意味を込めて、今回のテーマを選んでみた次第です。